森が歩く

 森が歩く、という表現は果たして適切だろうか。元々彼らは土に足を突っ込んで、雨風に耐えながら、じっと遠くを見据えていた。彼らだっていつの日か太陽が嫌になるかもしれない。その時、彼らは理解する。すると、潜っていた根は地面を割り、抵抗されながらも、その姿を我々の前に見せる筈だ。

 それについて論議する、数人の人間がいた。

「ありえない。森には足など存在しないし、動く事は出来ない」と一人の男が言った。

「それは森の考えじゃないぞ」ともう一人が言った。

「あなたが言っている事も森への侮辱よ」と一人の女が言った。

「いや、侮辱ではない。尊敬である」

 彼らは論議を重ね、森は裸足で逃げ出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る