第10話 新しい場所へ

「じゃあそこにあるタンスの段全部引き出しきってみて。」


 ローナに言われるがままタンスをただの四角いトンネル状態にしてみるとそこには何と、


「扉!?

 ローナ、よくこんなの見つけたな。」


 まさかタンスの中に扉とは。



「まぁ私の場合は先に向こう側から入ったから。


 向こうからは普通に開いたのに帰りになったら閉まってたときはゾッとしたけど……」


「自動ロックとは中々高性能だな……」


「自動ロックなら向こうからも開かないでしょうが馬鹿。」


 あぁ、またローナがドン引いた目でこちらをみている……。

 そろそろ泣いてもいいんじゃないだろうか。


「えーん。ローナが酷いよぉ。えーん。」


「嘘泣き気持ち悪いからやめて。」


 すみません……。


「ごめんって……。じゃあ開けてみようぜ。


 ……ってその前にローナ、お前移動はどうするんだ。

 なんなら俺が握っていくけど。」


 流石に歩幅違いすぎるし。


「女子に『握っていく』って言えるあなたのデリカシーのなさに脱帽だわ。

 女子として嫌ってだけじゃなくてゴリラに握られるのは怖いし。」


 あっ、またあの目に……、怖いんだって言ってるじゃん……。

 それにしても俺デリカシーないのか……?

 あとゴリラではない。


「仕方ない、じゃあ胸ポケットにでも入ってくか?」


「そっちの方がまだマシね。

 悪いけど入らせてもらうわ。」


 よかった、今度はドン引きされなかった……。


「よし、じゃあ行こう!」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る