赤い手紙。

私は誰に造られたのだろうか。

私はなんの為に存在しているのだろうか。


人間と違うのは造られた事と人間の匂いがしない事。


身体も同じ。

内蔵だって、脳みそだって。

見た目も同じなのに。

私には人間の匂いと存在意義がない。

「どうして…」


横たわる死体から両手で血肉を掬う。

赤黒い肉片は島のようにどっしりと存在する。

両手の力を緩めると情けなくベチャベチャと音を立てこぼれ落ちる。


死体の胸ポケットには小さな赤い手紙。

「パパへ

おしごと がんばってね」

決して上手いとは言えないその字に私は何も感じることが出来なかった。


「私にもいたのかな、パパ…」

この死体は愛されていたのだろうか。

愛していたのだろうか。

家で帰りを待つ者がいたのだろうか。




私には無い人間の匂い。

グチャグチャになった男からは未だに人間の匂いがする。



ポツポツと降り始める雨が私の顔を撫でる。



嗚呼、

まるで私…



愛されたかったみたい。

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