第10話 これは恵海√(ルート)確定ではありません
迎えた最終日。
カーテン全開で寝ていたため再び朝日によって目を覚まされた。
3日目はジョーカと同じ部屋だったので何もなく平和に眠れました!!
……。
そんなことなかった…。
天体観測? を終えて部屋に戻ってきた俺たちは風呂に入ったりしていたので就寝は1時半過ぎだったと思う。
流石にその時間になると自然と瞼が落ちてくるので寝落ちした。
すると、眠気が皆無のジョーカから横腹を突かれたり、お馴染みの耳いじりが始まったり…色々ちょっかいを出されたりした。
流石に寝たかったのでジョーカを無理矢理ベットに招き入れ動かないように抱き締めて寝ることにした。←これ止むを得ずだからね。
それから少しの間は静かだった。
眠れないのかモゾモゾ動いたり俺の頬をつねったり…
「もう…寝よう」
俺が放った一言によりようやく就寝…
時計を見ると2時過ぎだった。
なので4時間しか寝ていない。
超眠い…
これは二度寝するしか!
同じ体勢で寝ていたらしく、体の一部が少しだけ痛いので寝返りを打つと目の前に寝息をたてるジョーカの姿が。
朝日に照らされてた白色のパジャマを着ているので何とも神秘的な姿に加えて着ているものが少し乱れて胸元が少し見える。
こんな姿を見せられたら誰だってドキッとしてしまう。
最近誰かと一緒に寝ることが多いので、少しの事では何とも思わないが、これは反則だよ…
同じクラスメイトの寝顔をガン見しているのもどうかと思ったので目を
……。
しかし、寝られない。
その後も寝付けずにただ目を瞑っているだけだった。
暇だったので色々考え事をしていた。
1つは帰宅してからの晩飯。
旅行帰りってドンと疲れが出るというか、何もやる気がなくなるんだよね。
俺1人だったら食べないでパタンキューでも良いんだけど一応姉さんいるし。
結論…コンビニ弁当にします。
2つ目が昨日姉さんと話したふーちゃんについてだった。
昨日の夜中ふと思い出したのだが、別れる日の夕方に『さよならは言わないから』と言って微笑みながらも瞳には大粒の涙があったのを思い出した。
そんなものを思い出してしまったら気になってしまう。
けど、小学生の時別れた俺たちには連絡手段が無いため半分諦めている。
この件については現状どうしようもないのでひとまず忘れることにした。
俺は仰向けになって天井を眺めていると左側から手の平が振り下ろされてきた。
い、痛い…。
ジョーカって寝相あまり良くないのね。
「うーくん…」
へ、うーくん?
誰それ?
「うーくん。モフモフえへへぇー」
モフモフ? ペット?
こうして俺は頭を撫でられているのだ。
するとジョーカは瞼を開けて今の状況を見て赤面していた。
「おはよ…」
「おはよう」
……。
……。
「ご、ごめんね。寝苦しかったでしょ」
しかし、一向に離れる気配なし。
「いや、ついさっき抱きつかれたから寝苦しくはなかったかな。『うーくんモフモフ』って言ってたぞ」
「そっか…えへへ。 えっ! 寝言言ってたん??」
「ん。言ってた」
ニコニコしていたジョーカが一気に赤面した。
「理稀くんにだけ言うけどうーくんってのはわたしが大切にしているぬいぐるみなの。いつも一緒に寝ているから寂しくて…あはは」
なるほど。夢の中ではうーくんをモフモフしてたけど現実は俺と言うわけか…
なんか申し訳なくなった。
「今日で最終日だから今夜から会えるじゃん」
「そうなんだけどね。けど、この旅行が終わるのも寂しいから複雑だよ…」
ま、旅行ってそんなもんだよな。
それから起床して洗面台に向かうと化粧をしている月羽に遭遇した。
「おはよー。月羽化粧しているのか」
「わっ。お、おはよー。ま、まぁね。最小限にしているけどねー」
「なるほどね。あまり濃くない方がいいと思うぞ」
「しないわ。ヨシくんのお姉さんとは違うからね」
「ハハッ、あの人化粧濃いからね」
そんな会話をしながら俺は月羽の隣で歯を磨こうとすると歯磨き粉が無いことに気づいた。
「月羽ー。歯磨き粉余ってたら分けてほしいんだけど」
そう言うと月羽は驚いて化粧水を落としかけたので慌ててキャッチ。
「大丈夫か?」
「ご、ごめんね。ちょっと手が滑って」
化粧水を渡すとポーチを漁って歯磨き粉を取り出してきた。
「あと一回分はいけると思う。 押し出すからヨシくん歯ブラシ準備して」
「了解。よろしく」
月羽は両手で唸りながら必死にチューブから絞り出そうとしているが出てこない。
これは逆の方が良いと思ったので俺がチューブを持って月羽が歯ブラシを持つことにした。
それから力一杯絞り出した結果ブラシ一帯が覆われるぐらい歯磨き粉を出すことに成功したが思いもよらぬ出来事が。
俺の歯ブラシを月羽がパクッと咥えてしまった。
「……え?」
「ん?……あっ!!」
咥えた瞬間気づいたらしく歯ブラシを口から出した。
「ご、ごめーーーん。癖でそのまま咥えちゃった。折角2人で出した歯磨き粉を……しかも、あたし歯磨き終わってるし」
誰にでもミスはあるし仕方ない。
これが姉さんだったら説教だったけど月羽はそういうことをする人じゃない。
「いいよ。その歯ブラシちょうだい」
月羽は首を傾げて渡してくれた。
その渡された歯ブラシで歯磨きするべく口の中に突っ込む。
「わっ! ちょちょ…なにしてんのよ!」
「何って…歯磨きだよ?」
「そうじゃないわよ!! あたしの口の中に入った歯ブラシを躊躇なくヨシくんの口に入れるなんて……」
オロオロしたり怒ったり…見てて面白い。
「これしか歯磨き粉ないし?」
歯磨き粉無しはキツイ…。
「そ、そうだけどさぁ…一回洗ったりしなさいよー」
「いや。洗ったら歯磨き粉落ちちゃうよ?」
2人の努力の結晶(笑)が台無しになる。
「あ、そうか。で、でもそのまま使うのは禁止!」
「禁止と言われてももうこれで全体磨いちゃってるし…」
そう言うと芯を抜かれたようにヒョロヒョロと洗面所にある椅子に座った。
「いわゆる間接キスしたからここまで騒いでるんでしょ?」
「か、か、か……」
お、月羽が珍しくバグった。
プシューと頭から湯気を立てるように洗面台に伏せた。
俺は歯磨きを継続中。 ここまで来たら最後まで磨かないとね。
それから像のごとく動かなくなった月羽を少し横に動かして口を濯ぎ洗顔した。
「てか、間接キスで蒸発しそうになってるけど子供の頃1つの飲み物を2人で飲んだりしてたじゃん。 今更騒がなくても…」
するとムクムクっと起き上がった。
「昔と今は違うの!」
何が違うのか教えてほしいわ。
「そういや、姉さんと2日連続の相部屋はどうだった?」
ふと気になったので聞いてみた。
するとそれ聞いちゃいます?と言わんばかりの表情で答えてくれた。
「最悪よ… 昨日は特に何も無く普通に寝たけどその前の日は涼夜くんに申し訳なくて…」
「何やったんだよ…」
「いや、彼に危害は加えていないんだけど、お姉さんとのバトルが夜中まで決着つかなくて…。 その…
月羽はニコッとしているが本当に申し訳ないと思っているようだった。
「そう思える月羽は優しいな」
そう伝えて俺はリビングに戻ろうとした。
「えっ、そうなのかな?」
月羽は思いがけない言葉に俺の方を見てきた。
「そうだな。周りに気を配ることが出来る月羽のそういうところ好きだぞ」
あ、好きとか言っちゃったけどいいか。
そこはスルーしていただきたい。
「す、す、す、好きって…」
やはり拾われたか。
「いや、その…性格が好きというか…あの…」
そう言うと俺は壁際まで追い込まれて壁に寄りかかる感じで座った。
そして、月羽が目の前まで接近してきた。
その距離は月羽の髪の匂いがわかるぐらい。
「性格が好きならあたしのこと好きってことだよね?」
「え? ま、その…」
どうしよう…なんで答えるべきか…
「ど、どうなのよ? 答えてよ…」
お互い完熟したトマトのように顔が赤いし、俺はめっちゃ顔が暑い。
しかも2、3秒に一回こちらに近づいてくる。
ヘルプミー!!
「こ、答えないとね……このまま間接じゃないキスしちゃうんだからっ」
なんでだよ!
てか、マジでどうすればいいんだ?
うーん……考えろ自分。
……。
ダメだ思いつかん(><)
もうこれはキスして誤魔化すしかないのか。
そう覚悟した。
すると洗面所のドアが開いた。
助かったーのか?
「ちょーーーーっと!! あたしの可愛い理稀に何してくれてんのよーー」
髪がメドゥーサの如くボサボサの姉さんが仁王立ちして登場。
あの髪自ら動いたり、目が合ったら石にされたりしないよな?
重力に逆らっている髪の毛がどうなっているか気になる…。
「この泥棒猫め! 目を離せばこれだから全く…」
「誰が泥棒猫よっ! 質問してただけよ? 文句あります?」
「あるわ。その距離が問題ね。 あとキスがどうとか言ってたわね。それも重大な問題ね」
この人盗み聞きしてたのでは?
「お姉さん! 盗み聞きしてましたね? その前にメドゥーサみたいな髪型どうにかしたらどうです?」
「メ、メドゥーサって……ちょ、理稀何笑ってんのよ!!」
「俺も同じこと思ってたから。その髪自ら動いたりしたいよ……ね」
ダメだ後半笑ってしまった。
「もう。そんなこと無いわ!」
そう言ってブラシで髪を整えようとするもブラシ通過後にピョンと髪が跳ねる。
「お姉さん。ブラシしても意味ないですよ。諦めてメデューサになりましょう」
「そ、そうね…まず、貴方を石化させるわ」
……。
おかしいな…俺の方を向いてそんな事を言っている。
俺は自分のことを指差してみると頷く姉さん。
「なんで? あたしじゃないの?」
流石の月羽も困惑しているらしい。
「やっぱり自分の大切なモノって一番近くに置いておきたいじゃない? だから石化した理稀を置いておくの」
……。
……。
姉さんの爆弾発言に俺と月羽は絶句。
「な、な、なーんてね。冗談よー。本気にしないでよ」
……。
……。
「ちょっと。何か言いなさいよ」
「え? 今度はあたし? ここはヨシくんでしょ?」
「いいえ。今は貴女に質問しているよ。10秒以内に何か発言しなさい」
もう。わけわからん…。
「あたしも石化させるならヨシくんかな……」
えぇ…俺めっちゃ狙われるなぁ。
「ちょっ、ヨ、ヨシくん。引かないでよぉ。お姉さんからも何か言ってください!」
「今の回答はいただけないわね。 理稀を石化していいのはあたしだけなの♡」
「もう。意味わからん」
話しの内容がある意味濃すぎて忘れていたけど今の3人の体勢がおかしい。
俺は壁に寄りかかっていて、その目の前に四つん這いになって攻めてきている月羽、何処から持ってきたのか知らないけどバスローブをまとい脚を組み俺の目の前で足をちょこちょこ動かす姉さん。
その足の動きがいちいちウザい。
誰か入ってきたら無事ではない状況。
「そろそろ朝ごはんだろうし戻ろう。なので月羽そこを退いておくれ」
「嫌よ。さっきの答えを聞くまでは動かないんだからっ」
マジか。どうしよ……
「ほっほっほー。この状況で逃げられるとでも? 堕天使と悪魔がいるのよ?」
堕天使? 悪魔?
流石の月羽も『何言ってんのこの人?』と言わんばかりの表情をしている。
「あたしが堕天使でそこのちっこいのが悪魔。ま、見習いかパシリ悪魔ね」
「誰が!ちっこいパシリ悪魔じゃーー」
けど、月羽をどことなくそう見てしまった自分がいる。
てか、自分のことを堕天使とか言ってるこの人中二病なんじゃね?
「元々はあたしと貴方は平和に過ごしていたけれどそこのパシリ悪魔に天使の心を奪われてしまったの。それで仕方なく貴方の敵になったの。嗚呼…可哀想なあたし」
昨晩アニメでも観ました?
一方月羽の方は怒りを忘れてドン引きしている。
俺も流石に少し? いや、ドン引いている。
姉さんはすらっとした脚を近づけてきて足で俺の頬をペチッと叩いた。
「嬉しいわよね。堕天使に叩かれるんだもの」
イラッ。
予想通り2発目が来たので足を掴んだ。
「えっ?」
予想しない出来事に焦る姉さん。
俺は足をくすぐった。
「ギャハハー。ちょっ、ダメー。くすぐったいってー」
それでも俺は止まない。
割とさっき叩かれたのイラッとしたし。
「ちょっ、マジストップ!! お、落ちるー」
その言葉と共にドスンと椅子から落ちる姉さん。
その衝撃で姉さんがまとっていたものがヒラリと地面に落ちた。
俺は2日連続して姉さんの全裸を見ることとなった。
俺はとっさに横を向くとそこには落下する姉さんを予知して移動した月羽がいて、目が合った。
……。
……。
お互い沈黙。
「どうしたの。あたしを見つめちゃって\(//∇//)\」
いやいや。俺はお尻を押さえて痛がっている姉さんを指差してみるも月羽は頬を染めながら「どうしたの?」としか言わない。
「ヨシくんあっちを見ちゃダメよ♡ あんなモノを見たらピュアなヨシくんが汚れちゃう♡ あたしを見なさい」
そう言って俺の頬を押さえている。
ニコニコしながらどんでもない発言するな…
「はぁ? あたしを見ても汚れません! むしろ心を浄化しますわよ?」
てか月羽が言ってた悪口聞いてたのね。
「姉さん…早く服着て」
「嫌って言ったらどうする?」
「無理やり着させる」
「じゃ、お願い♡」
「嫌です」
「むー。言ってることが違う( *`ω´)」
すると足音が聞こえてきて、洗面所のドアが開く。
足音からドアが開くまで2〜3秒だったので処理が追いつかなかった。
「貴方たちいつまでイチャイチャしてんのよ。朝ご飯よ」
入ってきたのは恵海だった。
この状況スルーなのね。ある意味助かったかも。
「月羽ちゃんはご飯運ぶの手伝って。 亜梨栖ちゃんは服を着る! よし……じゃなかった、神崎くんはここに残りなさい!」
「今理稀って言いかけたわよね?」
「うんうん。あたしも聞いたわ!」
姉さんと月羽が珍しく互いを肯定している。
ふと思ったがこの2人が手を組んだら最強なんじゃないか?
某戦闘民族のように。
「き、気のせいよ? いいから。早く行ったー」
そう言って月羽と姉さんを追い出すしたのでこの場所にいるのは恵海と俺の2人。
「あー。忘れ物したー。開けて開けてー」
一瞬沈黙したあと月羽がドアを開けようとしたがドアが開かない。
ここ鍵付いてたっけ?
「ちょっ、開かないんだけど? めぐみーん開けてー」
……。
おっ、シカトしたのかと思って恵海の方を見ると押さえるのに必死で応答出来ないらしい。
その後ジェスチャーで場所を変われと指示してきた。
この争い訳わからんと思いながら場所を変わると恵海は鏡の前で髪を整えてる。
月羽がリビングに戻ったのか、扉をこじ開けようとする力がなくなったので扉を押さえるのをやめて、椅子に座った。
恵海にリビングへ戻っていいかと聞いたら「はい?」と言われたのでここに座っています。
俺がここにいる理由がわからないまま数分が経った。
「あの…俺ここにいる意味あります?」
「あるわ! 絶対そこから動いちゃダメよ!」
割と必至に訴えてきたので何かしらの理由があるのだろうが教えてくれない。
昨日の相方が愛依奈と涼夜ってまさかね。
前にクラスで愛依奈が胡散臭い怪談話をしてきたことがあったっけ。
「あの…昨晩に怪談的な何かを聞きました?」
するとビクッとさせてからこちらを向いた。
「な、な、んなわけないわ…。か、階段は聞くものじゃないわ下りるものよ」
「あの…上りを忘れています」
「そ、そうね…上らなきゃ下りれないわね…あはは」
……。
……。
「怖いんですね?」
「はて。なんのことやら?」
恵海はワザとらしく斜め上を向いた。
「ワッ! 人影!」
「ギャーー。ど、ど、ど……」
驚き過ぎて『どこ?』という単語が言えてない。
「嘘です。正直に認めてくださいよ」
「認めません。 こ、怖くないしぃ? さっきのは驚いただけよ」
こういうの認めないところ意外と頑固なのかな。
そこから特に会話なく時が流れた。
俺は暖房の暖かさに負けて椅子に寄りかかっりうたた寝していた。
洗面所にも暖房付いているとかすごいな。
てかこの眠気…ヤバイ。
恵海は化粧を終えたらしく「よし!」と言って立ち上がった。
俺も一緒に立ち上がってリビングに向かいたいのだが眠気が…
……。
……。
少し寝てしまった。
瞼を開けると俺の右側で本を読んでいる恵海がいた。
思いっきり寄りかかって寝ていたらしい。
「すみません…寄りかかって寝てしまったみたいで」
「あら、おはよう。 別にいいわ」
そう言ってニコッと微笑んだ。
「ま、俺をここに閉じ込めたんですし、このくらいしてもらわないとですね」
「あら。珍しく攻めるわね。もっと刺激のあるものでも良くてよ?」
何を企んでいるのかわからないのでとりあえず首を横に振っておいた。
「遠慮しないでよぉ」
そう言いながら俺の頬を突いてきた。
俺は恵海に寄りかかったままだったので椅子に座り直した。
「いつまでイチャついてるんですかぁー?」
……。
へ? 今の誰?
俺は恵海と顔を見合わせた。
周りを見回したが誰もいない。
「理稀くんって女の子みたいな声だせるのね…す、すごいわ」
その表情はどこか焦っていた。
これはボケて『そうなんです』と言うべきか。
「す、すごいでしょ?」
結局ボケることにしたけど、さっきの声聞いたことあるぞ?
「そうね。今度特技の一つにするべきね」
恵海はどうも落ち着かないらしくキョロキョロしている。
そう思いながら再び鏡を見るとそこには1人の女の子が立っていた。
「うぉわーーー」
「ギャーーー。 え、えぇ?」
驚く俺と状況を理解できない恵海が叫ぶ。
「そ、そんなに驚かなくても…。けど、驚かせているからビックリしてくれた方が良いのかな…うーん」
想像以上のリアクションに対してどうしていいかわからないジョーカがオロオロしている。
「あぁ。小木ノ城さんね。あ、焦ったわ…」
恵海は胸元に手を当てて『ふぅー』と息をした。
「それにしても焦ったな。いつの間に入ってきた?」
扉が開閉した感じがなかったんだよなぁ。
「2人がうたた寝してる時。 全く…なんてことをしてるかなぁ」
ヤバイ…あれ見られていたんだ…
「わたしは1つの秘密を知ってしまいました。これがどう言う意味かわかりますね?」
この子何企んでいるんだ…ガクガク。
「せ、生徒を守るのが教師である恵海の仕事ね。理稀く…いや、神崎くん。あたしが君を守るからっ!!」
そう言って俺のことをギュッとした。
「な、な…」
ジョーカは言葉が出てこないみたい。
「そ、そしたらエ、エッ……チな先生から同級生を守るのがわたしの役目。 わたしが君を守るからーー」
「あたしはそんな破廉恥な教師じゃありませーーん!」
と言うことで先生と同級生にサンドイッチされています。はい。
とりあえず2人を剥がしてリビングに戻ることにした。
もう疲れたし…腹減った。
リビングへ行くと。月羽がエプロンを巻いてフライパンを片手に忙しくしていた。
姉さんはソファーに寝そべってテレビを見ている。
……。
姉さんってば…。
俺は月羽を手伝うべくキッチンに入った。
「悪いな…姉さんがあんなんで…俺が代わりに手伝うから」
「あっ、ヨシくん! 手伝ってくれるの? ありがとう。そしたらレタスをちぎってボールに乗せてもらっていい? そのあと…卵焼きを作ってくれると嬉しいかな」
「了解!」
「救世主。恵海ちゃんも手伝うわ! 月羽ちゃんどうすれば良いのだ?」
「そしたら…冷蔵庫からプチトマトを出して乗せてもらってそのあと空いているフライパンでベーコンを焼いてください」
「任されたわ! 」
3人でやればすぐ朝食が完成する。
そう思っていたが何か引っかかる。
レタスをちぎって盛りつけながら記憶を遡る…
このメンバーで料理出来るのが俺、月羽、ジョーカ…
あれ? 俺の隣でフライパンに入れたベーコンを眺めている人含まれてなくね?
『昨日妹が来てご飯作ってくれる予定だったんだけど、来れなくなって余ったやつ。わたし料理苦手なのよねー』と言ってた気がする。
横を見るとウインクされた。
……?
「見てて! あたしのフライパン返し!」
そう言ってフライパンを振った瞬間…
フライパンから火柱が上がった。
どうやらフライパンの角度がダメだったらしくガスコンロの火がフライパンの油に引火したらしい。
硬直する恵海。
俺は慌ててガスを止める。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫よぉ…み、見た? あたしのフラッペ…」
涙目になりながらこちらを向く恵海。
「フラッペじゃなくてフランベです…」
フラッペってかき氷みたいなやつだよね?
「ト、トラウマよ。もうここには立てない…」
硬直して涙目になった恵海が呟いた。
どうするか…
「ちょっとトイレ行ってくるわね」
月羽はそう言ってリビングを出て行った。
ソファーの方を見ると姉さんはスピーと寝息をたてていた。
これはやるしかない!
恵海の耳元へ近づいた。
そして……
「フランベしたことで美味しくなったよ。何にも怖くない」
もう少し気の利いた事を言えたのでは?
そう思いながら俺は再びレタスを盛り付け始めた。
その後、特に何も無かったので恐る恐る恵海の方見ると…
頬に手を当てて硬直していた。
「あ、貴方ね…な、なんて事をしてくれたのよー」
あれ? 怒らせてしまった?
「いや、その…すみません…」
「もう。謝っても許さないんだからねっ。まったくもう…」
あれ。怒ってない?
「あたしをほ、惚れさせるなんて…」
はい? 惚れさせる?
「あたしにはね。心に決めた人がいるのよ。だから…あたしを惚れさせるのは遠慮して欲しいわねっ!」
「すみません…距離置いた方がいいですかね?」
それはそれで少しショックかな。
「あの。いや、違うのよ? そうじゃなくてね…えーと。むしろ距離が近くなって嬉しいんだけど…」
一々表情が変わるから見てて面白い。
その後1つの結論にたどり着いたらしい。
「理稀くんがあたしの心に決めた人を上回れば良いよ! そうよ。恵海ちゃんナイスッ!」
心に決めた人とか言っておきながら大して好きじゃないんじゃね?
「よく聞いて! これから黄昏の約束までに貴方を惚れさせてみせるから!」
「あたしもー!」
……?
声のする方を見るといつの間にか起きていた姉さんがカウンター越しにこちらを見ていた。
「亜梨栖ちゃんいつの間に起きてたのね…」
「なんか『惚れさせる』とか『心に決めた人がいる』とか言ってたから気になって話を盗み聞きしてました。テヘッ」
「そ、そう。これは亜梨栖ちゃんとバトルする日が来そうね」
「えぇ。その時はお手柔らかに♡」
その後月羽が戻ってきて、ランニングしていた涼夜と愛依奈が帰ってきた。
愛依奈は寝たかったらしいが涼夜に叩き起こされたらしい。
「ジョーカ聞いてーー…涼夜ったらあたしを連れ出したくせに置いていくんだよ。酷いよね」
「いや。それはお前が歩くスピードより遅かったから痺れを切らして置いていったんだよ…あれ本気?」
歩くスピードより遅いランニングとは?
「本気だよっ!!」
「涼夜くん…置いて行っちゃダメっ」
ジョーカは腰に手を当てて涼夜を叱っている。
「はい。申し訳ありませんでした…」
「わ、わたしじゃなくて。愛依奈ちゃんに謝ってあげてっ」
ジョーカは手をブンブン振って焦っていた。
「小木ノ城には必至に謝るけど、愛依奈には謝りたくな……イテッ」
涼夜が言い切る前にチョップを繰り出す。
それを見て皆んなが笑う。
こんなに大人数でいて楽しいと思えたの久しぶりだ。
前には抱かなかった『また来たい。遊びたい』という感情でいっぱいになっていた。
この集まりがずっと続けば良いのに…
そんな事を思いながらご飯を食べて終えた。
その後長居するのもあれなのでささっと片付けてをして家路につくのであった。
ゴールデンウィークはまだ続くのでしばらくみんなと会えないだろう。
こうして内容の濃かった別荘での二泊三日は終了。
明日からゆっくり休むぞー!!
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