第3話 綺麗な緑色

数時間後…病院の霊安室に案内された僕はもう喋る事の無い兄貴の最期の表情を見る事となってしまった…


駆けつけた両親とシズカさんがそこに立ち尽くしていた…


シズカさんは憔悴しきった顔で…


「ニコラは私が車に轢かれそうになったのを助けてくれたの…本当は私が…ニコラは代わりになって…ううううう…」


耐えきれず…僕に寄りかかって大粒の涙を流した…


シズカさんの悲しみが多分、僕以上だというのはずっと二人を見てきた僕には痛いほど分かった…



僕はシズカさんの肩を抱いて


「きっと、兄貴がシズカさんと入れ替わってもみんなの悲しみは同じかそれ以上ですよ。


シズカさんが無事で兄貴は天国うえで喜んでいる筈です。今は思いっきり悲しんで、その後は頑張って兄貴の仕事を引き継いでやってもらえますか?


よろしくお願いします。」



僕の言葉にシズカさんは黙って頷いて…だけど止まらない涙を何度も何度も拭った…





そして僕は両親に後を任せてタクシーでシズカさんを自宅まで送ってから僕は自分の部屋に戻った…



突然の兄貴の死…まだ未だに受け入れられない…昨日はあんなに元気だったのに…



僕はバイオツリーシステムのトランクを見つめてそして手に取った…トランクを開けて中身を確認する…


綺麗に発光する緑の液体が入ったガラス状のカプセルから金属の骨組みが伸びている物…それ一つだけが中央に入っていた。


…その綺麗な緑色を見つめていると幼い頃、兄貴と森の中を歩いて空を見上げると木漏れ日が降り注いできたのを思い出して僕の目に知らず知らずのうちに涙が溢れる…


溢れた涙が頬を伝って…トランクの中の物に一粒、二粒と落ちた。


その時だった…緑の発光体が一段と輝きを増してブルブルと震え出した…「うわぁぁぁぁ」僕は驚いて座ったまま少しずつ後退りする…



トランクに入っていた金属の骨組みはやがて動き出してズルズルとトランクから外に出て行った…


僕は怖くて近づけないでただ見ているだけしか出来なかった…


「あっ…!!」


そして僕が組み立てたフィギュアの足から中に入っていった。


僕は兄貴の言葉を思い出す…


「近くに水分があるとそれを媒体として物体と結合してしまうんだ…」


水分…結合…まさか…


僕の涙にシステムが反応してフィギュアと結合したっていうのか…

と、とりあえず…もう兄貴には相談できないし…


じゃあ…シズカさんは…

でも今日は疲れきって休んでいるだろうし…


僕はフィギュアを眺めた…特におかしい所は見当たらない…


「明日…明日になったらシズカさんに相談してみよう!」




色々あって疲れていた僕はとりあえずベッドに横になってそのまま寝てしまった…


僕が寝ている間にフィギュア…彼女の目が綺麗な緑色に発光していることも知らずに…





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