パンな火の渦

「チョココロネだ…」

「チョココロネ…ぶっ、は、はは!」



それは、食器を洗ってから今井さんの家を出てすぐのこと。

私たちは件のチョココロネ…じゃなくて、『火の渦』を目撃した。



「今井のばあちゃん通りじゃん!まじウケるんですけどー!ひー!」



灯ちゃんが腹をかかえて笑っている。


金田山の中腹あたりでその火の渦が浮いていた。

頂上付近に上がったり、下がったり、左右に移動してみたり、動きは読めない。

確かに渦の感じがチョココロネの膨らみに似ている…というか、

言われたらそれにしか見えない。



「符を飛ばしてみたけど、ばっちり検知したわ、符術確定だわコレ」



ひとしきり笑った後、灯ちゃんは燃えて消えていく符を私に見せた。

検知した符術と同じ事象を起させることで、どんな術の種類かわかるらしい。

燃えているのだから、あのチョココ…火の渦を検知したものであることは明白だ。



「縁はどうよ?さっきのばーちゃんの時も視てたんだろ?」



確かにさっき今井さんの縁は視ておいた。

全部の色を記録してないけど、改めて火の渦の縁とモバイルを見比べる。



「255,0,102…うん、おばあちゃんが言ってた火の渦はこれですね」

「ビンゴ!で、どうするかだよな~」



近くの椅子に勢いよく座って、灯ちゃんは伸びをした。

足開きすぎだが彼女は私と違って短パンスタイルなので、まあ、いいか。

私も隣に座って、火の渦を眺める。



「山、登ってみますか?」

「いやーこの時間から準備なしに登るのはあぶねーな。襲われたら足元見えねーこっちが不利じゃん?」

「それなら、明日8時前に登って様子をみるのはどうでしょう」

「そんなゆっくり??朝明るくなる頃を狙うかと思ってたわー」



私を見る灯ちゃんは意外そうだ。

…自分が無鉄砲に突っ込んでいくタイプなのはよく知っているけども…。



「あの渦、山と危険な縁のつながりがないんです。

 以前から一定の距離を保って浮遊しているみたいですし、時間をおいても大きな問題はないかと」

「菜子っちの読みはなかなか外れないかんね~。よし、今日はおなかいっぱいだし帰るべ」



その後、私たちは帰路につきながら明日の方針を考える。

結局、金田山に関する情報を調査してから登ってみることにした。


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