夢飼いリリス

若葉 萌

第1話リリスは今日も失恋を飼う


「ねえ、を売っているお店があるんだって」


「え、そんなお店あるの?いきたーい!」


「でも、そのお店、に行かなきゃ売ってくれないんだって」


「え、それってどうなの。失恋してからじゃ意味ないじゃん」


「確かに、でも宝石もらった人は幸せになるらしいよ」






◇ ◇ ◇ ◇

 

「リリス様おはようございます。今日もリリス様に出会えて俺は幸せ者です。あぁリリス様本当に素敵です。昨日の黄色を基調としたの花柄のワンピースにカーディガンもお似合いでしたが、黒を基調としたトップスに赤色のロングスカートもとてもよくお似合いです。さすがリリス様、なにを着ても素敵です。さぁ、本日も恋に悩める愚か者たちに勇気と救いを差し上げましょう!」

 そう笑顔で話しかけてきたのは、相棒のクウだ。黒髪ストレートで男には見えないほどの美形であり、私が誕生日プレゼントにあげた銀の髪飾りがよく似合う。私がいうのはなんだが、クウはリリス大好きマンだ。そして、私以外に少し毒舌である。

 朝の長々としたクウのあいさつに鬱陶しくも思えるが…うん…鬱陶しい。自分の心に嘘はつけない。慣れてきたらそうでもないとか、褒めてもらえるし、変化に気が付いてくれるから嬉しいとか言ってみたいものだ…。


「おはよう…ありがとう。今日も活舌かつぜついいね。さあいこうか。」


 私たちは、『Love《らぶ》』というお店を開いており、主に宝石を売っている。宝石っていってもただの宝石ではない。だ。夢飼いには、いろいろな飼い方がある。本にしたり、花にしたり、皆様々だ。それに、夢飼いも今では多様化していて、楽しい夢ばかり売っている夢飼いや、呪いのような夢ばかり専門にしている店もある。

 宝石を売っているお店だが、普段は喫茶店を営業している。まあ、いわゆる1つの仕事では食べてはいけないというやつだ。クウの作る料理は美味しくて喫茶店の『Loveらぶ』のほうが近所に知れ渡っている。


「本日は、佐々木ささきさんが宝石を持って来られると思いますが、どのような宝石を用意しましょう」


「様を付けてって言ってるでしょ。お客様なんだから…」


「様は付けるのはリリス様以外ありえません」

こう言い切っちゃうあたり、さすがクウだ。

「いやいや、喫茶店してるし、接客は大切よ。普段から言葉遣いに気を付けないといざって時にボロが出るし」


「俺は、神様思考のお客様接客はどうかと思うのですが…つけあがってリリス様に失礼な態度をとられるとそれこそ殴りかかってしまって接客どころではないです。最近は、お客さんも増えてきてますし、迷惑な奴がきたら困ります。俺の神様はリリス様だけでいいのです」

あー…。接客向いてない。なのに、どうしてお客様が増えるのか謎だ。やはり、よく漫画やネットであるという言葉は正しいのかもしれない。


「うーん…謎だ……って、もうこんな時間。どうしようかな。最近、お客さん多いのはお店が有名になったってことでうれいしんだけど、その分まだ育っていないのも多くって…私の宝石は時間がかかるし、未完成なものを渡しても、いい結果はうまれないし…。あぁでも今日、散歩に行くといい宝石が育つはず。その宝石にしましょ。じゃあ、佐々木ささき様が来る前に、散歩に行ってくるわ。店番よろしく」

 

「はい。お気をつけて。もし何かありましたら連絡を…」


 さてと、今日もお仕事がんばりますか。

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