突発短編集

都稀乃 泪

適応能力が半端ない女の子の話

いつもより少し早く家を出ると、駅に向かう途中、同じクラスの女の子と会うことがある。


今日から夏休み・・・・・・だけれど、課外が始まるため、本当のはまだ遠い。


「ちょっとコンビニ寄ってかない?」


滝のように汗が流れ出ていたので二つ返事で快諾した。

入ってすぐはまだ涼しかったのだが、少しすると少し肌寒く感じるようになってきた。

そんなタイミングで彼女がアイス売り場に向かったので少し離れた場所で見ていると、彼女に声をかけられた。

ちょっと寒くて、と言うと彼女は気まずそうに


「ごめんね、私そういうのに疎くて」


と言った。


その後お店を出ると、またすぐに汗が噴き出してきた。彼女は汗ひとつかいていない。


暑くないの、と尋ねると彼女は笑って


「私、適応能力やばいから」


と言った。



そんな会話をしたのが今朝。しかし、放課後彼女を見かけた時はそれとは打って変わってかなり憔悴していた。目も赤く腫れてしまっている。

心配になって声をかけると、親友が亡くなったのだと教えてくれた。


まだ友達を亡くしたことはないので、心中を察することしかできないが、彼女の様子から見てもさぞ辛いことだろう。俺は彼女にかける言葉が見つからなかった。


次の日、彼女を駅で見かけた。声をかけると、昨日の朝と同じように笑いかけてくれた。友達のことはもう大丈夫なのか、と尋ねると予想外の反応が返ってきた。


「え?誰だっけ?そんな人知らないよ」

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