6日目(前編) 《差別》って・・・①

 十日ほどが経ち、ようやく二学期最初の部活の日が訪れた。

 六校時開始のチャイムが鳴り、大石先生が教室に入ってきた。先生は生徒との距離が近めな先生で、いじられキャラというか、いじってもいい人を生徒の態度などから見抜くのに優れている。


 教科書の章末問題を解くための時間に男子二人で何かをしていたらしい。


「おや、“運命の赤い糸”ですか?」


 先生が尋ねると、二人は笑いながら否定していた。


「まあ、人口の一割はね、人たちもいるからね。えー、不安なお母さんから生まれるとね、風になるらしいんで、第二次世界大戦のときのドイツなんかでは人が多かったらしいですね。皆さんは、街で妊婦さんを見かけてもストレスを与えてはいけませんよ」


 クラスメイト達はこの話を聞いてクスクス笑っていた。悪意こそ感じなかったけれど、その時の私にはそのセリフがひどく差別的に感じられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る