ヘビなのかモグラなのかどっちだよ

『ヘビモグラとは、トガリネズミ目モグラ科に属する少々変わったモグラである。このモグラの最大の特徴は、蛇のような迷彩模様の毛と、蛇の持つピット器官をもつことである。ピット器官とはヘビ亜目の構成種が持つ赤外線感知器官のことである。主にこの機能は外敵の探知に使われることが明らかになっている』


「はえー、すっごい不思議…」

「モグー!モグー!」


 さっそく彼は昨日捕まえたモグラについて、父のノートパソコンを勝手に使って調べていた。


『ピット器官がありはするのだが、それ以外の面では特にほかのモグラとは大差はない』


(大差ないのか…)

「モグー?」

「……?」


 主人のジト目を受けて、モグドンはこてんと小首をかしげた。頭上の兎も一緒になって首をかしげる。


「それにしてもピット器官かぁ、モグラって確か鼻もいいんだっけな…。嗅覚はまだ今までの訓練法に加えればいいだけだけど、ピット器官って…やること増えたなぁ…」


 と、ぐちぐちこぼしながら撤収の準備にかかる。


(こんな歳のやつがノーパソでカタカタ調べものしてるなんて知られたらなんて思われるか…、ちゃんと履歴消しとかんとなぁ)「ウラ、モグラ撤収だ撤収」

「モグー!」

「……!」(汗)


 さっさとノートパソコンを閉じて、優人はそそくさと裏山へと出かけて行った。








 ――――――








「さて、じゃぁまずはウサギの時みたいにイッチョやってみるか」

「ピー!ピー!」ムシャムシャ


「ピット器官つーのは熱源探知…、つまりサーモスコープみたいなものか。改めて考えるとトンでもねぇな、素でそういうことができるんだからなぁ」

「モグー!」


 褒められてると分かったのかモグドンが嬉しそうに一声鳴いた。


「ウサギの時でだいたい要領はつかめたからな。あれが起きた原因は、はしゃぎすぎてコントロールを手放したことが原因っぽかったし、今度は慎重にな!慎重に…」


 と、ごにょごにょ呟きながら両の目に力を入れ始める。すると徐々に視界が切り替わり始める。


「おっおっ、お~!すげー!まるっきりサーモスコープ覗いているみてーだ!」


 優人の視界は今や完全にサーモスコープを被った時の様な視界へと変化していた。


「…っと冷静に冷静に、この前と同じ轍は踏まんようにせんとな」


 そんなことを言いながら試しにモグドンと白玉の方を見てみると、真っ赤な熱源が二つそこにはあった。


「うお!お前ら体温高いな!」

「モグー?」

「……?」


 そういえば、と思い出したかのようにもう一つの熱源の方へ顔を向ける。


「ほーん、お前もそこそこ体温高いのな」

「ピヨ?」


 しばらくその視界のままあたりをうろついていたが、やがて飽きて、またいつものように魔法の修練や能力のコントロールなどを門限まで行っていた。


「たらいま~」

「おかえりなさい、ちゃんて手洗いうがいをー」

「わかってまーす」


 生返事をしながら洗面所へ行こうとした優人は途中で足を止め、振り返って母の体温を見てみた。


「何?どうしたの?」

「うんにゃ、ただ体温高いなって」

「?」


 頭上にはてなマークを浮かべる母を残し、優人は洗面所へと向かい、洗面所で手を洗いながら、これからの鍛錬について思いをはせ、げんなりした。


「ハァーーー……」

「モグ―!」

「……!」


 二匹の使い魔は主人のげんなりした原因など気にも留めずに、優人の体の上を好き勝手に這いずった。

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