天衣 凱斗 ORIGIN opening phase 02

某年某日──


"君ならきっと█████████に辿り着けるだろう"


それは遠い記憶の欠片

忘却の彼方へと置き去られた遺志



とある冬の木漏れ日

熟したレモンの皮のような色の厚手のコートを着た少年は、

いつものように両親とともに一族の会合に連れていかれる日が嫌いだった。

周りが何かと少年に期待しては褒めそやし、

あわよくば自らが利益になることしか考えない大人という存在を嫌った。


少年は嫌気がさし、自らの感情を封じ込め人形になることを選んだ

そうすれば余計なことを考えずに探偵の一族としての期待に応えられた

繰り返される解りきった答え、解りきった謎、真実、なぜか解ってしまうそれに、

自分の中の何かが埋まらない『飢餓』の衝動が時折押し寄せてくるのだ。


つまらない、ただ、それだけでどうしてありがたがるのか

この異様ともいえるこの力は何なのだろうか、と名前を付けれずにいた。


そんな衝動を押し殺すようにしていつものように、屋敷の中央にある大樹が生えた中庭へと分厚い洋書を持ち込んで、だれもいないことを確認すると。読み始める


本は好きだ、たとえ解りきっていても自分はその世界の中の人物になれるから。

知らない世界がその本の中にある、それだけが少年の楽しみであった。


不意に声が聞こえた

いつもの他人が会話しているだけだろう、と本へと意識を戻し世界へと戻ろうとした


「カイトくん」


名前を呼ばれた少年は内心訝しげにしながらもいつもの張り付いた人形のように無表情に応答する、いつものやつならこれで気が咎めてどこかへと行ってくれていたが……


「ああ、ようやく見てくれたか。」


一言でいうと、胡散臭い

片眼鏡のモノクルをした金髪の男性とか悪役の匂いしかしない


破れたオブラートに包んでそう告げる

目の前の男は驚いたようなしぐさをするが失笑して隣に座る

座る必要性ないと思うんだけど

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