Aspect~とある高校生の記録2~

水谷一志

第1話 一

 恐怖はSNSから始まった。

 それは、とある日の学校を終えた夜のこと。

 ―三木弘司(みきこうじ)は、高校野球の強豪校の押しも押されもせぬ4番バッターである。

 そしてその日も、三木は授業の後野球部の練習をしていた。

 練習はランニング、キャッチボールの後、ボールとバットを使ったものになる。そしてフリー打撃。三木はその日も、グラウンドの端から端に打球を何本も飛ばしていた。

「弘司、お前やっぱすげえな!

 よく飛ばすよなあんなとこまで。」

これは、練習後三木が同じ野球部員からよくかけられる言葉である。そう、三木は他の高校生の野球部員に比べて、パワーが突出している。

 しかし、三木はそれだけではない。

 三木の高校での通算打率は3割を軽く超えている。そう、三木は単なるパワーヒッターではなくアベレージもしっかり残しているのだ。また三木は足も速く、盗塁数も多い。一般的にあらゆるスポーツにおいてパワーとスピードは両立しないことも多いが、三木はその両方を持ち合わせている。また三木はショートの守備も抜群で、まさしく走攻守そろった選手だ。

 「三木君は素晴らしい選手だ。ドラフト1位で指名する球団も複数あるだろう。」

「プロになったら、トリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)も達成できるのではないか?」

 三木はプロ野球のスカウト、また周りの人間からそう言われていた。

 「いや、俺なんてまだまだだよ。」

これは、三木が他の人に褒められると必ずといっていいほど口にする言葉である。

 実際三木はそのような恵まれた才能を持ちながらも、おごることなく練習に真面目に打ち込んでいた。

 また三木の将来の夢はプロ野球選手であったが、三木は勉強も手を抜いたことはなかった。

 「俺なんかが言えたことじゃないけど、俺メジャーリーグにも興味あるんだよね。もちろんメジャーリーガーになるにはもっと頑張らないといけないけど―。

 だから俺、今のうちにもっと英語を勉強しておかないとな!」

三木はそう言って英語の勉強を日々頑張っていた。また三木はそれだけでなく、プロ野球という自分の希望進路とは直接関係のない勉強も、しっかりこなす文字通りの「優等生」だったのである。

 しかしそんな三木のSNSに、一通のメッセージが入る。

 それは、練習、また勉強でクタクタに疲れ、寝ようとする前にたまたまスマホをチェックして気づいたこと。

 そのメッセージ、とは―。


 《あんたのクセ、知ってるよ。》

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