魔法使い、聖女と話す

 僕は自室に戻り荷物の整理を始めた。

 さっきも言った通り防具とか武器は置いていく。

 自分のお金で買った物だけは持っていく事にした。

「自分で買った物て結構少ないんだなぁ。」

 私物の少なさに僕は苦笑いする。

 荷物を全部袋に入れて僕は自室を出ようとした。

 と、ドアをノックする音が聞こえた。

「はい、どちら様ですか?」

「私・・・・・・、ミアナだけど・・・・・・。」

「・・・・・・どうぞ。」

 部屋に入って来たミアナは申し訳なさそうな顔をしていた。

「何か?」

 僕は出来るだけ感情を抑えて喋る。

「あの・・・・・・、本当に出ていくの?」

「宣言されちゃったからね、しょうがないよ。みんなの総意なんでしょ?」

「う、うん・・・・・・。あ、あのゴメンね。私が我儘言って誘ったのに・・・・・・。」

「別に良いよ、貴重な経験は出来たから。」

「ねぇ、これからどうするの? 村に帰るの?」

「・・・・・・村には帰れないよ。どんな顔して会えば良いの?」

 そう言った瞬間、ミアナはハッとした顔になった。

 そう、村のみんなはミアナを温かく送り出してくれたけど、僕はオマケとしか思われていないから無視されていた。

 そもそも、僕は村の中では浮いた存在だった。

 まぁ、『捨てられていた』というのが大きな要因で拾ってくれた家では下働きの様な存在だった。

 それは村全体もそうで僕は村では最低辺の人間だった。

 そんな僕と唯一仲良かったのがミアナだ。

「僕は冒険者には向いてないみたいだから何処か人が来ない所でひっそりと暮らす事にするよ。多分二度と会わない、と思う。」

「ご、ゴメンなさいっ! 私、マークスの境遇の事、すっかり忘れてたっ!! 本当は私が一番のマークスの味方でいなきゃいけないのにっ!!」

 ミアナは泣きながら土下座した。

「いや、もう良いよ・・・・・・。僕は一人で生きていけるから。」

 そう言って、僕はミアナの肩をポンッと叩いた。

「ミアナは聖女で周りに必要とされているんだから。勇者達と一緒に頑張ってね。」

「マークスぅ・・・・・・。私、旅が終わったら必ずマークスに会いに行くからぁ・・・・・・。」

「わかったよ、待ってるから。それじゃあ僕は行くから。」

 ミアナを宥めて僕は宿屋を出た。

「う~ん、自由だぁっ!!」

 僕は宿から離れた所で漸く背伸びをして大声を出した。

「漸く追放されたっ! これからはのんびりするぞっ!!」

 真夜中だけど僕の心は晴れやかだった。  

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