第46話 静かな感情

 退院し、雅男のいる部屋に帰ると、何事もなかったみたいに、入院前の日常があった。

 雅男は何も言わなかった。私も何も言わなかった。

 いままでの全てがなかったかの如く、いつ以来だろうというくらいの、恐ろしく静かな日常が流れていった。

 しかし・・、お互い心の奥底に、沸々と何か得体の知れない、真っ黒い感情が沸いているのを感じていた。そして、それが何か避けられない沸点を迎える時を、予感していた。

 それは、静かに、ただ静かに、醸成されていた・・。

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