リアルステータス証明書サービス

「おはようございます。早朝早くから失礼します。異世界テレパシーショッピングです。変なテンションですがナナ=ビンテージです」


「二十万当たったんだよ! 聞いてよ見てよ! これ! これ!前パックだけど最高レア! ホイル! しかも日本語限定バージョン! 二十万! ふつうに強いの!」


「それは、綺麗だね。クーヘン君、大事なカードならしまっておかないと」


「自慢」


「……うん。ところでクーヘン君、君の最終学歴はなんだったかな?」


「……うん」


「うんじゃなくて、一応履歴書はもらってるけど、これによると大学は卒業できてるみたいだね。卒論のタイトルは」


「それ必要? 今必要? てかプライバシーじゃんか。それ流すとかいいの? 別に、僕の経歴に恥ずかしいことはないけどさ。でも社会的コンプライアンスとしてどーかなと思うんだ。いや別に話してもいいけどさ。でも面白くないし、それにショッピングに関係ないじゃんか」


「はい。こんな感じで過去の話しはし難い方も多いのではないでしょうか?」


「違うよ。僕はしてもいいんだよ。でもコンプライアンスが」


「それは決して恥ずかしいからと、例えば引き篭もりだったりとか、社畜だったりとか、前科があったりとか」


「前科はヤスダ君だね」


「……そうなの?」


「絶対そうだよ」


「……決めつけは良くないと思うけど、ごく普通の生活をなさっていた方でも、異世界に来て、あまりにも生活レベルの違いに話が合わず、気まずい思いをしたことがお有りじゃないでしょうか?」


「それはあったね。現地でラーメンの作り方自慢したら出汁とか茹で汁とかで食べ物無駄にするなって宗教どもが煩くてさ」


「そんなあなたに! 今回ご紹介しますのはリアルステータス証明書サービス、つまりは素敵な経歴なのです!」


「け、経歴だって!」


「そうです! 先程話題に上がった大学の卒業証書から、高校、中学、小学、幼稚園、それぞれお好きな学校を、どれを選んでも同じ値段でご提供させて頂きます。もちろん全部本物です!」


「え? 本物?」


「本物です。紙、インク、フォント、印刷機器、全てが本物、完璧です」


「うん完璧だね」


「それに加えまして、各種免許証、運転だけでなく医療免許、薬剤師資格、弁護士資格に……あーもう全部です! 全部の国家資格を一セットにつき五つまで! どんな組み合わせでも自由です! 更に追加で一セットをご購入する場合、重複する学歴をこちらの資格にチェンジできます!」


「やった! これで夢の元医者で弁理士崩れのジャッキ式つり上げ機械運転者になれるぞ!」


「そしてここからがコーポレーションの底力! ご購入のみなさまへ! 先着五千名様限定ではございますが、オリジナルの! 悲しい過去をプレゼントいたします!」


「か、悲しい過去だってー!」


「それもとってつけたようなチープなものではありません! 不幸自慢無双! 全部がダークでディープ! 例えメインヒロインを虐殺したようなクズ野郎でも、これなら仕方ないと許され仲間になれるほどの悲惨さです!」


「お、言い切りますねぇ。でもそういうのって矛盾があったり、設定が破綻してたりするんでしょ?」


「いえいえ完璧な悲しい過去です。何せ、プレゼントする不幸な過去は全て、モデルとなる人間を使っているんです」


「モデル?」


「そうです! 実際にその悲しい過去を生きてきたモデルの経歴をそっくりそのままコピーしてますので、創作などとは次元のの違う、完璧な過去をお届けできるのです!」


「それなら安心だね」


「もちろん、モデルは責任を持ってちゃんと処理してますので、急なご本人登場とはならないと保証します」


「それなら安心して自己憐憫に浸れるね」


「リアルステータス証明書サービス、不幸な過去を追加したコーポレーションオリジナルセットは五千名限定ですので今すぐご注文ください!」

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