虹のベンチ

虹が見えるまで

 汽車を模した遊具と背の低いブランコ。

無駄に広い公園の中で遊具とよべる遊具は

その2つしかなかった。


 でも僕たちは公園に来ても遊具で遊ばないし、砂場や広い敷地にも立ち寄らない。


 公園の端に置かれた背もたれに虹が描かれた青色のベンチ、【虹のベンチ】で僕たちはいつも幼い時期を過ごした。


 あまり体を動かすのが得意ではない僕たちは、運動よりも読書が好きで、室内にいるのが窮屈になると僕たちはベンチで昨日の夢の話や最近読んだ本の話などを語り合った。


 僕も彼女も室内で本を読んだり、たまにするTVゲームも好きだったけど、何よりも2人でベンチに座って話し合うこの時間が好きだと気付いていた。


 幼いあの日の思い出の1ページ。

人生という何千何万と綴られた多くの冊子の

たった1つの記憶が自分を勇気付けてくれる。


 人は大切な思い出を忘れないようにお気に入りのしおりをアルバムに挟む。消えないように、いつまでも残すために。


 僕にとって虹のベンチで彼女と過ごした

思い出がそれだったのだ。


 これからずっと虹のベンチは僕たちの

大切な場所であると、根拠のない確信が

僕と君の心に、木漏れ日の光に照らされるように小さく輝き続けていた。


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