第6話 やっぱり小さい娘はいいよね(意味深)



 夕食を食べ終えた後、俺は1度自身の物置に戻り、その後、今は樹の部屋の前に来ている。


 コンコン

 

 「樹、いるか?」

 「はいよー」


 俺がドアをノックすると、返ってくる返事と、開くドア。


 「よっ、魔力の感知、教えてやろうと思ってな」

 「おぉ!さすが刀哉、さっきから自主練してんだけど一向に分からないんだよな」


 どうやら自主練していたらしい。関心関心。


 樹はどうやら魔力というものの存在を理解していないのかな? いや、頭で理解はしているが、その存在を理解できないのか?

 自分で言ってよく分からんな。取り敢えず、こいつは感覚でやるタイプじゃなく頭で考えるタイプだからなぁ。


 「自主練ってどうやってるんだ?」

 「普通に魔力を見つけようとしてるんだが、一向に分からないんだ」

 「あー、多分だが、いつもと違う感覚を探そうとしても難しいと思う。俺達の体は魔力を異物として捉えてないからな。だから、魔力を何かに例えるんだ。俺の場合、魔力と血液を同視してやった。魔力が身体の中を動き回ってるって考えて、血液と共に移動してるのをイメージしたら出来た」

 「魔力と血液を同視、か」


 樹は目を閉じて集中しているようだ。俺はその間に自身のステータスを鑑定する。



───────────────────


 夜栄刀哉 17 男

 レベル2

 

【生命力】320

 【魔力】350

 【筋力】145

 【体力】140

 【知力】155

 【敏捷】150

 【器用】150

  【運】300


 スキル


 武器術

 [剣術Lv.1]


 魔法

 [魔力感知Lv.2][魔力操作Lv.2]

 [火魔法Lv.1][水魔法Lv.1][風魔法Lv.1]

 [土魔法Lv.1][光魔法Lv.1][闇魔法Lv.1]

 [無魔法Lv.1]

 


 ユニークスキル

 [成長速度上昇Lv.-][因子適応Lv.1][完全記憶Lv.-]

 [鑑定Lv.4][偽装Lv.-]


 異能

 【吸収Lv.-】


───────────────────



 なんか、魔法、全部普通に出来た。

 うん、それぞれ魔法を使う時に、火魔法は酸素に魔力で着火するイメージでやったら出来た。勢いは思ったより強かったが。

 水魔法も魔力を水に例えたら出来たし、土は魔力で地面を動かしただけ。

 風も魔力で空気を動かして風を起こすイメージで、光と闇と無が少し難しかったかな?


 三つとも概念的なものだから難しかったのだが、光は魔力を発光させるイメージ。闇は木材を持ってきて、それに魔力を侵食させた。

 ほら、闇ってなんか病原菌とか汚染とかそういう意味もありそうだろ?


 最後の無は、魔力を固めて木にぶつけたら出来た。難しいだろと思ったがな。

 考えてみればどれもこれも魔力が鍵だな。特殊属性も魔力をどうこうすればいいのだろう。



 と、樹に変化があった。俺の魔力感知のおかげか、樹の魔力が身体の中心に集まっているのが分かる。どうやら魔力を捉えるのは出来て、魔力を外に出すのに挑戦しているのかな?


 「……お! 出来た!!」


 樹の魔力が外に放出された。


 「良くやったじゃないか樹!」

 「お前のお陰だよ! それにまだ終わっちゃいない」


 樹は笑顔を一転また真剣な顔に戻す。外での魔力の操作は難しいからな、でも1度コツを掴んだ樹ならいけるだろ。


 案の定樹は外で魔力を動かすのに成功し、顔の前で棒状にしてブンブン振ってい──それは俺のパクリか?


 「よっし! 出来た!」

 「おぉ、凄いじゃん。まだ10分位しか経ってないぞ」


 俺の体感だが、樹はまだ10分ほどしかやっていない。これは俺より早かったんじゃないか? 流石天才だ。


 「あーこれでやっと魔法の練習に移れるのか」

 「そうだな、ちなみにこんな感じだ」


 ブォー


 俺はお手本で樹の顔に扇風機ぐらいの風を当ててやる。


 「おまっ!? 魔法も使えるのかよ!」

 「ここに来る前に練習してきた。今のは風魔法だが、さて、お前は出来るかな?」

 「くっそ! ほら教えろよ! マスターしてやらぁ!」


 よしよしやる気らしいな。でも教えてと威張るのはどうなんだ?

 ただこれは少し難しいから、今日でマスターは難しいだろう。いや、案外俺みたいに行けるのか?


 俺は1時間程樹に教えたところで、物置に戻った。樹は1時間で火魔法と水魔法を取得することが出来た。

 というか30分で全属性を取得できた俺は異常なのかもしれない。樹が「お前、絶対全部の属性持ってるだろ?」と言ってきたのにはドヤ顔で返しておいた。

 ちなみに樹が練習している間、俺はずっと魔力で遊んでいたため、


───────────────────


 夜栄刀哉 17 男

 レベル2

 

【生命力】320

 【魔力】350

 【筋力】145

 【体力】140

 【知力】155

 【敏捷】150

 【器用】150

  【運】300


 スキル


 武器術

 [剣術Lv.1]


 魔法

 [魔力感知Lv.3][魔力操作Lv.4][魔力隠蔽Lv.2]

 [火魔法Lv.1][水魔法Lv.1][風魔法Lv.1]

 [土魔法Lv.1][光魔法Lv.1][闇魔法Lv.1]

 [無魔法Lv.2]


 その他

 [速読Lv.1]

 


 ユニークスキル

 [成長速度上昇Lv.-][因子適応Lv.1][完全記憶Lv.-]

 [鑑定Lv.4][偽装Lv.-]


 異能

 【吸収Lv.-】


───────────────────


 となった。魔力で遊んでると無属性も地味に上がるんだな。覚えておこく。

 魔力隠蔽は樹の邪魔にならないように意識してたら手に入ったらしい。ちなみに伸ばしたりして遊んでいるだけなので魔力は減っていない………と思う。少なくとも体感では減っていない。


 「さーて、後は素振りだ」


 と、訓練で貰った剣を抜く。木刀は無い。


 ブン!! ブン!!


 30分ほど振っているが、明らかに朝よりも、訓練中よりも良くなっているのが分かる。スキルのレベルは上がっていないから、技術が上がっていると見るべきか。

 

 と、そこで不意にパラメータはレベルアップでしか上がらないのか疑問になった。剣を振っていたら必然的に筋力が上がりそうなものだが。

 

 そう言えば近接訓練が終わった後、拓磨は立っていて、美咲は座りながらも他よりはマシという結果になっていたな。パラメータは同じなのにも関わらずだ。

 もしかしたら、パラメータの数値は、絶対というわけじゃないのか?


 例えば毎日筋トレをして筋肉がついた冒険者(冒険者自体いるのか分からないが)と、俺たちみたいな普通の高校生。

 双方筋力が100だとして、腕相撲をしたらどうなるかというものだ。


 パラメータが絶対のものなら、両者とも決着がつかないという状況になる。いや、体力とかもあるだろうが。

 しかし絶対でないのなら、冒険者が勝つのではないだろうか、という意味だ。


 「てことは、剣を毎日、振ってるグレイさんは、滅茶苦茶、筋力が、あるという事かッ!」


 素振りをしながらなので言葉が切れ切れだが、後でグレイさんのステータスを見てみよう。



 ◆◇◆



 「……ん? あ~やべっ」


 どうやら、いつの間にか寝てしまっていたらしい。

 俺は物置の中で横になっていた。そう言えば昨日、いや、一昨日は寝てないんだったか。

 物置の中は水と風魔法、そして火魔法により綺麗になっているので、横になっても問題ない。


 外は既に朝。昨日どれほどやったか覚えていないが、頭の感覚から遅くまでやっていたのだと思う。

 

 さて、朝の素振りをしに行こう。少し頭が痛いが、日課にしておきたいしな。朝食を食べに食堂に行かなきゃいけないから、中庭でするのがいいかな?


 そう考えた俺は、剣を持って中庭に向かった。そして魔力で遊んでいるのはご愛嬌。



 ◆◇◆



 「おや? トウヤではないか」

 「あ、グレイさん」


 俺が中庭に行くと先客がいた。グレイさんだ。いや、正確にはここに来る前から剣を振る音が聞こえていたのでわかってはいたのだが。


 「どうしたんだ?」

 「いえ、今日は素振りにと。日課にしたいんで」

 「なるほど、いい心がけじゃないか」


 俺はグレイさんと話しながら鑑定を使う。今度会ったら見ようと思ってたからな。拝見させていただきます。


───────────────────


 グレイ・レーダス 36 男 

 レベル81


【生命力】32650

 【魔力】3310

 【筋力】5920

 【体力】5270

 【知力】1020

 【敏捷】4470

 【器用】2120

  【運】42


 スキル


 武器術

 [剣術Lv.8][槍術Lv.4][斧術Lv.3]

 [盾術Lv.4]


 戦闘補助

 [体術Lv.5][平衝Lv.5][格闘術Lv.5]


 魔法

 [魔力感知Lv.2][魔力操作Lv.3][無魔法Lv.4]

 [魔力纏Lv.4]



 強化

 [身体能力強化Lv.7][筋力強化Lv.6]


 ユニークスキル

 [剣鬼Lv.-]

 


───────────────────

 

 (つ、強い……)


 何時ぞやの腹黒王様を見た時の感想みたいだ。

 グレイさんはこれぞ戦士というようなステータス。知力と魔力が低い代わりに、生命力と筋力と体力が滅茶苦茶高い。レベルも今まで見てきた中で最高峰。

 スキルも近接戦闘のものが豊富だ。それにユニークスキルもある。ただ、スキルレベルはまさかの8止まり。それ以上は無いのか?


 「む? どうした?」

 「あ、いえ、なんでもないです」


 突然止まった俺を不思議に思ったのか、グレイさんが声をかけてくるが慌てて誤魔化す。


 まだグレイさんは訝しんでいたが、俺が剣を持つとそれもやめた。すみません、勝手にステータス覗いて。


 ブン!!! ブン!!!


 と、自身の素振りがまた良くなっているのに気がついた。剣が手に馴染んでいるというのだろうか。グレイさんもこちらを見て目を見開いている。


 「凄いなトウヤ、1日でそこまで成長するとは……私の部下と良い勝負だぞ」

 「あ、あはははは、そうですかね?」


 俺は鑑定でステータスを見ると、案の定剣術のレベルが2に上がっていた。一レベ上がるだけで劇的な変化があるな、スキルは。

 そう言えば魔力操作もそうだったか。今では結構魔力を伸ばしたり固めたり自由自在だ。レベル4でこれなら7とか8とか、10ってどんだけやばいんだろうか? 伸ばせる距離とか量が変わっていくのか?


 グレイさんは驚きながらも自身の素振りは止めない。その素振りは相変わらず俺と次元が違う。あれがレベル8か……でもグレイさんでもレベル8って、10はあるのだろうか。後で図書館で調べよう。



 ◆◇◆



 その後1時間程素振りをした後、またしてもグレイさんに風呂に誘われ入り、「朝なら好きに使っていいぞ」と許可をもらった。よかった、素振りで汗をかいたあとに朝食だとやなんだよな。


 そう言えば食事の内容を言ってなかったなと、ここで思い出した。悪かったな。

 ここの食事は小説とかで書かれているほど低水準な訳では無い。まぁ王族だからかもしれないが。少なくとも初日の夕食以外はとても美味しい。


 食事の内容は、こっちの世界の料理がよくわからないが、サラダのようなものとパン等の軽食が朝、夜は肉が中心の料理が多い。

 夜に肉中心は女子からしたら困ると思いきや、訓練で運動していると自分に言い訳をしているのか喜んで食べている。

 

 叶恵は気にせず食べているが(昔からそうだった)美咲は食べる時に「大丈夫かしら……でも、運動してるもんね」と小声で呟いているのが聞こえてしまった。

 すまない美咲、向かいだから聞こえるんだ。


 さて、朝食を食べたら図書館へGOだ。


 「……(じー)」

 「よ、またきた」

 

 俺を迎えるのはジト目の視線。しかし、1度経験した俺は直ぐに慣れ耐性ができるのだ。


 「……そう」

 「あぁ、スキルの本ってどこにある?」


 慣れた俺は手馴れた感じで聞く。まだ二回目だがな。


 「……CとDの棚全部」

 「おう、魔法より多いな」

 「……スキルは、数が多いから」


 なるほどな、確かに一つ一つのスキルを解説してたらそうなるな。


 「おーけー、ありがとな」

 「……別に」


 あ、やべ、凄い、なんか、こう、萌えた。うん、小動物感がやばいんだ。うん。そう。


 煩悩を振り払い、さて、スキルの本を探そう。と、探し出してすぐに目に入ってくる『スキル』という本。


 (こ、このネーミングセンスは……)


 確認しなくてもわかった俺はそれを手に持つ。後は『便利なスキル一覧』と『なぜ人に向かれない? マイナースキル一覧』というのを持った。

 マイナースキルは、何となく惹かれた。ほら、ゲームでも不遇職を光らせたいとかそういう思いあるじゃん?

 あとはマイナー=弱いわけじゃない、というのもあるしな。


 そして作業のようにページを捲り、20分ぐらいで記憶し終わる。本を返すが、少し時間が余ってしまった。どうしようか。


 「……(じー)」


 こ、この気配は……!

 そちらを向けばさっと顔を背ける少女が見える。


 俺はやることもないので少女に話しかけることにした。深い意味は無い。


 「いつもここにいるのか?」

 「……(コクリ)」


 むむ、これは会話が難しい。コミュ障か? コミュ障はいけないぞ。


 「何かおすすめの本はあるか?」

 「……(コクリ)」


 少女は頷くと、足下をゴソゴソと漁る。その下にどれだけものがあるのか若干気になるが、それよりも先に少女が本を取り出した。


 「……『勇者の英雄譚』?」

 「……800年前の、勇者の本」

 「800年前? そんな前にも勇者がいたのか」

 「ん。勇者本人が書いたって、言われてる本」


 俺は勇者本人が書いたという事実より、少女の受け答えに間がなかったことの方に驚いた。

 

 「この本が好きなんだな」

 「……(コクリ)」


 何故か急に親近感が湧き出す。俺も、自分の好きなことなどは思わず興奮して語ることがある。


 「でも良いのか? 俺に渡したら暫く読めないかも知んないぞ?」

 「……私は他に読む本があるから」

 「そうか、なら貸してもらおうかな」

 「……(コクリ)」


 と、話していたら時間になったな。


 「んじゃ最後に、名前は? 俺は夜栄刀哉だ」

 「……ルリ・グラスベイン」

 「そうか。ルリ、本ありがとな」

 「……別に」


 おぉ! なんか今凄い青春してなかったか?俺。

 いやまぁ、青春なのか分からないけど、そんな感じじゃなかった?

 ルリの絶妙な間を開けた『……別に』は凄いあれだ、萌えるな。クーデレ? いや、ツンデレ?


 そんな事を考えながら、俺は『勇者の英雄譚』を持ち、訓練に向かった


 ……あぁ、でも、この本どうしよう。

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