第29話


「やっとついたー!!」


私たちは10日間の旅行を終えて無事お店に帰ってきた。

帰りもまたあおいさんと相乗りで2日間馬を走らせ行きと同じ村で宿に泊まり、行こうと思っていたパン屋さんでパンをいっぱい買った。

チラッと店内に入ったら美味しそうなパンがたくさん売ってたんだもん。ちょっと買いすぎたがまたお仕事生活が始まるのだ。自炊する暇もないし、意外とあっという間になくなるので問題なし!


ミラではリリーちゃんのところにも寄ってお土産を渡してきた。

新鮮な魚介類をたくさん持っていったらすごく喜んでくれた。

ミラは海が近くないしアイテムボックス持ちは珍しいから新鮮な魚介類はあまり入ってこないみたいだ。

お礼にとリリーちゃんお手製のアルレの実のパイをもらった。

前にももらって食べたがこれがとっても美味しいのだ。

1ホールまるごともらっちゃったからこれもアイテムボックスに入れておいて毎日ちょっとずつ食べよう。

これからまた始まるストレス社会人生活には甘いものが必須なのだ。


「はぁ。

明日からまた仕事なんて、考えただけで憂鬱です。」


「そんなに嫌なのになぜその仕事を続けているのか理解できないな。」


「仕事が嫌と言うより、嫌な人がいるから仕事も嫌になるんですよ。

キラキラ国宝級男子のあおいさんにはわかりませんよーだ。」


「なんだそのキラキラなんとかとか言うのは。意味がわからんな。」


「これは地味女にしかわからない悩みなんですよ。」


「疲れているからそんな考えになるんだ。

今日はもう帰って明日に備えてゆっくりしたらどうだ。

この旅行で素材もたくさん手に入ったからな。また明日から手伝ってもらうぞ。」


「はぁい。

それじゃまた明日!おやすみなさい。」




久しぶりの仕事だからか、まだ頭がちゃんと動いてない感じ。

ちょっと早めにお昼休憩とって美味しい異世界ご飯とリリーちゃんにもらったパイでも食べようかな、と思っていたら清水さんと会って一緒にお昼を食べることになった。

清水さんとは前に話しかけられてからお昼の時間が合う時は一緒に食べるくらいには仲良くなっている。

清水さんは明るくてさっぱりした性格なので私でも付き合いやすいし話していても楽しい。


「ねえねえ、どうやってそんなに急に痩せたの!?

またみんな気になってるみたい。文月さんがすごい痩せたって!

休みの間ダイエットでもしてたの?」


私は今回の旅行でかなり痩せたらしい。

旅行中は全身鏡を見る機会がなかったから気づかなかったけど、家に帰って鏡をみてあれ?っと思って体重を測ってみたら結構減っていた。


「えっと、特にダイエットはしてないんだけど。

逆に旅行に行っていっぱい食べてきたよ。

あ、でも馬に乗ってたからそれで痩せたのかな?」


「馬!?え、どういうこと!?

乗馬体験でもしてたの!?」


乗馬じゃないけど普通だったら普段の生活で乗る機会ないしそういうことにしておこう。


「うーん。まあ、そんな感じかな。

あとこれお土産!

ちょっとしたものなんだけど・・・。」


「えー!ありがとう!

貝殻が使われてるのかな?キラキラですごく綺麗だね!

旅行ってどこ行ってたの?」


やばいやばい。

なんて言えばいいんだ。


「えーっと、海のほうだよ。」


「そうなんだ!

もしかして、彼氏とか?」


話しが逸れたのは嬉しいけどそっち系の話題も答えられるような話がないよう。


「全然!

彼氏なんてしばらくいないもん。」


「じゃあ女友達?」


「女友達じゃないけど・・・。」


「やっぱり男の人じゃない!

あ、もしかして前に文月さんが会社の下で一緒にいたって話題になってたイケメン!?」


「や、でも!恋人とかそう言う関係じゃないよ!

ほら、私資格取るために習い事始めたから早く帰ってるって言ったでしょ?それの先生?みたいな。」


「へー!」


ニヤニヤしてる。

絶対信じてくれてない。


「ま、文月さんも最近すごい綺麗になったし、イケメンとのこれからも楽しみだね!

それじゃ、私はそろそろ仕事戻るね!

何か進展があったら教えてね〜!」


「そういう関係とは違うんだってばー!!」


言いたいことだけ言って戻ってしまった。

後で清水さんにはきっちり説明しないとね!

こんな地味女と恋愛関係だと思われるなんてキラキラ国宝級イケメンのあおいさんに申し訳ないよ、うん。


「文月さ〜ん!

ちょっと話しが聞こえちゃったんだけど、おやすみの間旅行に行ってたの?

まさかだけど、一緒に行ったのってあの前に会社の前にいたイケメンじゃないよねぇ?」


げぇ、花守さん!

盗み聞きですか。


「その人ですよ。

でも付き合ってるわけじゃないですよ。

前に言ってた習い事の先生みたいな感じなので。」


「・・・へぇ〜。

その習い事、私もやってみようかなぁ。

どこでやってるのか教えてくれない?」


はぁ!?無理無理無理勘弁してよ!


「ごめんなさい、今は定員がいっぱいで募集してないみたいなんです。

それじゃ、もう休憩終わるので失礼します。」


やばいやばい。

嘘は言ってないしね。実際募集してないわけだし。

なんとか誤魔化せたかな??



「・・・むかつく。」


慌てて仕事に戻るみどりの後ろ姿を花守はものすごい顔で見ていた。

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