勉強

『龍ちゃん!だーいすき』

放課後の僕たち以外いない図書室に朱音さんの柔らかい声が響く。

『そんな事言うより、テスト近いんだし勉強したら?』

向かい合った席に座っているため横を向いても赤面してる事がばれてしまうので、ノートにペンを走らせるふりをして下を向く事で何とか誤魔化した。

『あ!そこ間違えてる』

朱音さんは僕の英語のノートを指差しながら言った。

『え?この田中さんの気持ちを日本語にしなさいの部分違うの?』

『うん。この文に答えがあるから日本語訳しながら音読してみて』

流石成績優秀者の朱音さん、反対側からでも答えわかるんだ。なぜ音読させるのかはわからないが。

『えーっと、私はあなたがだ、だ……』

『え?わかんないの?こんな簡単な文、中学生でも分かるよ』

僕が中々音読出来ずどもっていると急かすように朱音さんが煽り文句を言ってきた。分かってる確かにこんな文、中学生でも分かる。でも僕には言えない、だって簡単な文って

アイラブユーなんだもん……でもこれってもう答え分かったんだから音読しないでノートに私はあなたが大好きですって書けばいいんじゃないか?そうすれば朱音さんにもからかわれないし、そうだそうしよう!僕は意志を固め顔を上げた。するとニコニコ笑う朱音さんと目が合った。

『は・や・く』

あーそうだ。

『龍生くんが大好きです。私と付き合ってください』

去年の今頃告白された時も付き合う気なんて無かったのに、あのニコニコの笑顔で告白された瞬間に僕は恋に落ちた。

『滝澤龍生は山崎朱音が大好きです』

僕は顔を真っ赤に染めながらそう言うと、朱音さんも一瞬驚いた様な表情を見せたがすぐに顔を赤く染めた。

『大好きって言うのも良いけど、言われるのも悪くないね』

満面の笑みを浮かべながら朱音さんはそう言った。

『あ、でも答え違うからノートには書かないでね』

『え?じゃ何であんな事言ったの?』

『ちょっとからかいたくなっちゃって。ごめんね』

朱音さんはニコニコの笑顔を向けながらごめんのポーズをとっている。

『そんな顔されたら怒らないじゃん……』

『え?なに?』

『なんでもない!』

僕はどうやら彼女の笑顔に弱いみたいです。

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