天真爛漫な女の子との何気ない日常

空と友達になった日の夜は空のことで頭が一杯だった。鈴のような声、話し方、仕草…どれ一つとっても、空の魅力を助長させるだけとなった。また、屋上に行けば空に会えるのか、あの声で名前を呼んでもらえるのか…

一度考え始めると永久機関のように止まらなかった。

僕の変わったことの一つに放課後、空と話すことが楽しみになったことだろうか。

ある日屋上に行くと先に空が来ていた。フェンスにもたれかかってぼーっと空を見上げていた。僕が来たことには気づいていないようだった。

こっそり近づいて軽く肩をたたく。

空はとても驚いたようで「だ、大地!?え?いつから…」ととてもあわあわした様子でしゃべっていた。その姿がまた可愛かったのは僕だけの秘密だ。

空と過ごす時間は何にも代えがたいものだった。

基本的に空は何事にも好奇心旺盛で些細なことを目を輝かせて僕に話してくれた。雲の形がどうとか、明日の空模様はこうなりそうだの傍から見たらどうでもいいことなのかもしれない。でも、僕にとって空との時間は輝いていて何よりも話している空自身が、とても可愛かった。

「ねえ、大地、最近雨多いよね。」唐突に空が話しかけてきた。

そういえば最近、連日雨の予報が続いている。さっきまでずっと降っていて今さっき止んだところだった。

「そうだね、雨ばっかで結構滅入らない?」

「あまり滅入らないけど自転車組は大変そう。」

「実際大変だぞチャリは。合羽はかさばるし走っていると余計暑くなるしでさ。」

「それ、大変そう。」無邪気に、空が笑った。それにつられて僕も自然と笑い声が出てきた。

空と話す時間は至福の時間であっという間に過ぎていった。

この前も話し始めたと思っらもう二時間経っていたことがあって、二人で大笑いした。

これが僕の新しい日常。偶然つかんだ幸せ。だけど、ただの偶然ではない気がする。空のと出会いは偶然であったけど何となく必然のような気もした。

まあ、この際どうでもいいことだ。偶然にせよ、必然にせよ、掴んだ幸せを謳歌出来ればいい。頭の片隅でぼんやりそう考えた。

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