『プルプルギスの夜』が世界を滅ぼすまでは

カピバラ

第一夜



 激しい雨の中、傘もささず、私は帰路につく。

 計画は、また失敗した。

 それなのに、自然と口元が緩むのは、


「た、ただいま……」


「おかえり、プル」


 それは、彼女とまた、一年を過ごせるからだろうか。びしょ濡れになった私の黒い髪を、わざわざ用意していたのか、手に持っていたバスタオルで拭いてくれた。


 彼女、——未来みくからは、とても良い香りがする。サラサラな栗色のショートヘアは、まるで絹のような手触り、——そんな彼女の髪が、


 私は好きだ。


「シャワー、しよっか?」

「……うん」



 二人で汗を流した。

 二人で髪を乾かし合った。

 未来の髪は短くて軽いから、すぐに乾いてしまう。

 私が少し残念だなと思考を巡らせている間、未来は私の髪を、——腰のあたりまで伸びた真っ黒な長い髪を丁寧にドライヤーで乾かしてくれる。



 二人でベッドに入った。

 向き合って、お話をした。

 計画の失敗の話題は、未来の口から出なかった。私が話そうとすると、未来はすぐに違う話題を持ち出した。そういう、優しい子。


 愛おしい。この儚くも弱き生き物が。


 世界が滅ぶまで、その笑顔を見ていたい。


 手を繋いで、瞼を閉じ、

 お互いの体温を確かめ合った。


 夜が更けていく。




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