三年前

第8話 映画デート

 今日は悠真と映画を観に行くことになった。

 ハル姉や母さん、真湖まこちゃんと咲空さらちゃんには、映画デートだとか言われたし。

 わたしは白の長袖シャツワンピに茶色のジャケットに、ショートブーツにした。かなり大人っぽいデザインの服装で少しだけ不安になるし、メイクやヘアスタイルもソワソワしているんだ。

 悠真とは映画館の前で待ち合わせた。

 遅いな~と思っていたときに、悠真がやって来た。

 やっぱり、私服だと大人だな……、しかも同い年には見えません。

「お待たせしました、じゃ、行くか」

「あ、悠真ゆうまが好きなシリーズもの、上映時間がすぐだよ! 急ごう!」

「待ってよ、陽菜乃ひなの!! チケット、取っとけ」

「OK!」

 なんとかチケットを取って、席は隣にしておいたけど、大丈夫かな?

 悠真がポップコーンとジュースのセットを買ってきてくれたらしくて、ほんとに助かった。

 上映時間に間に合ったので、落ち着いて観ることにした。

 アクション系の映画は悠真とわたしが共通で好きなもので、ハリウッド映画と邦画の新作はチェックしているんだよね。

 夢中で観てしまった気がする。

「いやぁ~。久々の映画、楽しかった!」

「陽菜乃、これからどうする? 予定してた時間よりは早いけど。」

「ほんとはいま開場した時間を観る予定だったからね。新宿だし、うろちょろしてみない?」

「そうだな、昼飯の場所も探しつつ、行くか?」










 新宿の街はわたしたちの暮らす街より、大きくてキラキラしているみたいだった。

 ギターのスコアブックを見たり、悠真がベースのスコアブックを買ったりしながら、あちこちを歩いたりしていたら、お腹が減ってきた。

「お腹空いたね、ポップコーン食べたのに」

「おっ、新宿御苑でゆっくりする? 入場料あるけど、レストランもあるしね」

 新宿御苑で食べることにした。

 とてもレストランの食事がとてもおいしくて、お腹がいっぱいになった。

「おいしかったね」

「あぁ、また、来ような」

 新宿御苑のベンチでゆっくりすることにした。

 悠真も体調が悪くなるときがあるから、そこを注意してないと。

 家族連れが多くいる。

 ボールがものすごい勢いよくわたしの足下に転がってきた。

「ボールが……」

「すみません!!」

 それは中学生になったばっかりくらいの女の子で、弟が六歳……幼稚園の年長さんくらいだったから、学校とかが休みで家族で遊びに来ているみたい。

「これ? どうぞ」

「ありがとうございました! ほら、陽斗はるとも。お礼を言ってね」

「ありがとうございました!」

「どういたしまして」

 男の子はボールを持って、走り出した。

「パパ~!! ボール、あそこのおねえちゃんがとってくれたの!」

 どうやら、お父さんと一緒にこっちに来るみたいだ。

 お父さんの顔を見た瞬間、恐怖で背筋がゾッとして悠真の手を握ってしまった。

「どうしたんだ? マジか……陽菜乃。大丈夫か?」

 悠真も理解したらしい。

 向こうもこっちを見て、びっくりしているみたいだった。

「なんで、ここにいるの?」

 わたしはびっくりしてしまった。

 その女の子と男の子の父親は


































 家を出た父さんだったからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る