桜の樹のしたで待つ想い

闇野ゆかい

第1話

 もう少しで陽が昇りきる頃。

 四月の上旬だが暖かいというより暑い日だ。

 風は少し吹いているけど心地いいまでとはならない。

 道を歩いていると桜が満開に咲いている。

 桜の花びらが舞っていて散歩にはいい風景だ。

 24歳の独身で未だに彼女ができないでいる、冴えない男子である。女性に対する耐性がついていない。学生時代もまともな会話を女性とはしていないぐらいダメな奴である。

 仕事は夕方からなので、いつもの道を歩いていた。

 桜の樹のしたのベンチで座っている女性に惹き付けられた。

 Tシャツにワイドパンツという出で立ちだった。

 毎日通るのに今まで会わなかったので気になったというのもあるだろう。

 肌が透き通っているほどの白い肌で清楚な人だった。

 彼女と話してみたくなり、彼女の横に腰かける。

 少し話すのに戸惑ってしまった。

 近くで見るとずっと綺麗な女性だった。

「桜綺麗ですね」

 緊張した。本当に緊張した。

 艶やかな唇から発せられる声にドキッと胸が騒ぐ。

「そうですね。桜は散ってほしくないです。こんな美しいので」

 心地いい音楽を耳にしているようで、心が安らぐ。

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