第3話 ムカつく魔導師の小娘をぜひともパーティーから追放したいんですの!!!!

 ……と、まあそんなこんないろいろあって、リリーとアタリは仲良くハデスの神殿に一緒に行くことになったのだが。



「ちょっと、あんたなんで一緒についてくるわけ!?」

「リリーとボクって、なんだか似た者同士だよねっ」

「どこがッ!?」

「んー。なんとなく?」


 道すがらリリーは、自分の後からついてくる巨乳魔導少女のアタリができるだけ道に迷うようわざと難しい小道を使って距離を稼ごうとした。

 険しい山道に入れば、わざと心細そうな獣道を通るし、テングノヤスミイワと呼ばれる足元が細くていつ落ちてくるかわからないような巨石の下をくぐり抜けたり、そう例えば、魔獣ミノタウルスが棲むとされる禁断の森をわざとぐねぐねと通り過ぎたり。

 それでもアタリは涼しい顔をして「うわーすっごーい!」とか「あすれちっくだー!」とか「楽しいねっリリー!」とか言ってはしゃいでいた。

 よく見ればアタリの着ている魔導師の鎧は、どこかで見たことあるような高価なもののような気がした。

 あれはおそらくかなり強い魔装具の一つ。低レベルモンスターでは近づくことすらできないくらいの、強い魔力を感じた。

 たしかどこかのダンジョンの奥だったか。うーん、たしか、地底竜のところに預けてあった大魔法使いの魔装アイテムの一つだったような。


「ドラゴンにもらったたんだよっ!」

 リリーが魔導鎧について聞くと、アタリは人喰い植物とよばれるオニヒトクイソウの群生地をファイヤで一掃しながら笑顔で答えた。

「ドラゴンの洞窟に遊びに行ったら、親切なドラゴンにここにある好きなのものを持ってけって言われたんだっ」

「やっぱり」

 最近地底竜の顔を見ないと思ったら、そういうことがあったのか。

「ケガとかさせてないわよね?」

「ボクなんにもやってないんだよっ?」

 ほんとか?

 ツッコミどころありまくりのアタリの言い訳に半分ため息をつきながら、リリーは一番大事な「ハデスへの貢物」を豪邸においてきたことを思い出した。

 アタリを振り回そうとかなり遠回りしているうちに、リリーたちは魔物の村のまわりをだいたい三周くらい回ってまた戻ってきたところだったので、ついでに家に寄って忘れ物の貢物を取ってきた。


 この時点でなんかもうどっと疲れが出てきたので、リリーは村にある、涼しくて、座れて、安く休める飲み屋にアタリを連れて行くことにしたのだった。



 なおリリーの棲んでいる『魔物の村』とは、人間はおらず、魔物が棲んでいる小さな村だった。

 飲み屋は三軒くらいある、争いもなく平和で、辺鄙な片田舎の極村だ。

 とうぜんお洒落な喫茶店のようなものはないし、駅前のゲームセンターだってない。

 酒屋と郵便局はあるが、大きめのスーパーはこの前潰れた。

 観光と言えるものは特になにもなく、檜と杉林と広葉樹の森、ニジマスと鮎が泳ぐ細くて綺麗な川。放置された段々畑が永遠と広がる。

 ダンジョンまわりの辺鄙な村とは、どこもだいたいこんな感じなのだ。

 わかるね?

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