「コードネームはモナリザ」最終章 王子ムハンマドとカナリヤ

来夢来人

第1話 王子ムハンマドと美少年スター

 王子ムハンマドは、中東の豊かな産油国に生まれた。

 その国は王制をひいていて、現国王はムハンマドの父親だった。

 生まれた時から、富と名声に囲まれて育ったため、ムハンマドは王族以外のものはみな、自分にひれ伏すためだけに存在するとさえ真剣に思っていた。

 そしてほしいものは何でも、手に入れなければ気がすまない性分だった。


 そのムハンマドがあるとき、人気のポップスターを紹介する番組で、偶然、美少年スターイマージュの音楽ビデオを見たのだった。女より美しいと言われた美少年スターの、妖しく魅惑的な歌と踊りに、ムハンマドはすっかり魅せられた。そして夢中になった。

 イマージュへの思いと夢想は、ムハンマドの中で、日々ウイルスが増殖してゆくかのように拡大し続けた。そしてついにはイマージュに会いたいがために、破格のギャラでイマージュのコンサートを企画し、イマージュの事務所にオファーした。とうぜん巨額のギャラにつられた事務所はそのオファーを受けた。

 宮殿でのコンサートを実現させたムハンマドは、ついに主催者として、イマージュと実際に会う機会を得たのだった。

 実際に会ったイマージュは、想像していた以上の美しさでムハンマドを魅了した。そしてムハンマドはますますイマージュに夢中になり、一方的にイマージュへの想いをつのらせていった。しかしイマージュは逆に、ムハンマドの中にストーカー的な危うさと危険な香りを感じ、ムハンマドからの連絡をいっさい取り継がないように、マネージャーに命じていた。




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