#12. 灰汁色


 私は歯車。

 顔も知らない誰かを動かすパーツ。


 0番目と1番目はもういない。

 今は、21番目から、34番目が働いている。


 誰も油をさしはしないが、私達は回る。


 軋む音がする。

 構わず回る。

 軋む音がする。

 構わず回る。


 誰かが言う。何かがおかしいと。


 削れる音がする。

 削り落ちる音がする。

 誰の体だ。誰の体だ。何が噛み合わない。


 私は構わず回る。


 0番目と1番目はいなくなった。

 溶けた鉄に混ざることなく、いなくなった。


 砕ける音がした。どこかで。痛みを感じない鋼が、かち割れる様な悲鳴がした。


 体が削れる。傷がつく。痛みなどない。


 回る。居なくなった彼らの代わりに、噛み合わない体で。


 ここには0番目と1番目はいない。

 ここでは21番目から34番目までが働いている。


 溶けた鉄の感触、混ざりあった同胞。

 噛み合わない原子、誰の物でもない私。


 内側から崩れ落ちる体。悲鳴をあげるかつての同胞。降り注ぐ歯車の土砂 ――



 さて。

 私はだぁれだ。

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