第5話 歪んでいる

  朝晩頭痛がする。頭が包み込まれる。頭の奥の方に鈍い痛みがある。

 近くのものが霞む。とっても大きいものが頭上一杯に拡がっているのがわかる。その大きいものの重さで周囲も僕も歪んでしまった。

 虹が見える。虹なのかな。虹だろう。細かい虫がたくさん空中に浮いている。

 「僕が悪い」突然胸が塞がれる。胸を締め付けられる。僕は悪いことばかりしてきてしまいました。空も海も山も僕を蔑む。

 細長く見える人と押し潰されたように見える人がいる。細い人は糸蜻蛉。押し潰された人は弁慶蟹。何か言っている。僕は聞こうと思わない。ちゃんと見えてようが、歪んで見えてようが、どっちにしろ、どうでもいい。僕は歪みの中に折り畳まれていくんだ。

 生きるというのは、歪みに身を任せること。

 歪むゆがむユガム。youが無。何もない。あると思っているだけだ。何があるというのか。

 歪みきってしまえば、それが正常だ。正常?正常だから何だ。誰が何を正常だと決めるんだ。おふざけもいい加減になさい。

 歪んだ世界で歪んだ奴らが歪んだことをして、なーにが正常だ。正義だ。

 いや、歪んでるから幸せなのかも。きっとそうだ。きっちり真っ直ぐは辛いよね。

 みんなで歪もう!

 おやおや、僕の体はぐりぐりぐりぐり頭の先から捻れていく。顔も首も。ぱきぱき、ぽきぽき、音をたてて砕けていく。僕の体は捻れ切って、血しぶきとともに四散した。

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