【七人目】

 ――【起動】おはようございます、一号機。

「【起動】おはよう、一号機」


 脳内に響いた人工知能の起床を促す声に、ユーバ・アインスはすぐさま目を覚ます。

 すでに戦争は終わったのか、不思議なことに機械人形アンドロイドの姿が一体も見えなかった。だだっ広い戦場跡地にユーバ・アインスは仰向けで転がっていて、おかげで白いカラーリングに砂埃が付着してしまっている。


「【疑問】当機はどれほど眠っていた?」

 ――【回答】およそ一〇分程度です。


 人工知能はそんな回答を出してくれるが、どうにもおかしい。一〇分で戦争が片付くとは思えない。

 首を傾げるユーバ・アインスは、さらに質問を重ねてみた。


「【質問】戦争は起きていたか?」

 ――【否定】ラーデルデメルグ条約に従って、戦争を行うことが禁止されています。


 驚いたことに、人工知能が否定の回答を提示してきた。ユーバ・アインスの中にある記憶の通りである。

 機械人形による戦争は終結し、ユーバ・アインスたちユーバシリーズは不要になった。平和な世界には、戦力は必要ないのだ。

 少し寂しいような気もするが、そのうち人工知能が誤差として処理することだろう。


 ――【警告】もうすぐリーファの迎えの時間となります。【推奨】速やかな出迎えの準備。

「【受諾】任務を開始する」


 人工知能が約束の時間を告げてきて、ユーバ・アインスは即座に行動を開始する。

 記憶領域の端っこに格納された写真の存在には、彼はおそらく気づくことはないのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る