帰還編

【一人目】

 目が覚めると、ガタガタと揺れる箱の中に横たわっていた。

 ユーシア・レゾナントールはぼんやりと現実を認識して、そして上体を起こす。決して上質とは言い難い寝台の上に横たわっていた彼が起きたと認識した部下が、顔を覗き込んできた。

 黒い髪で細身の少年だが、頼りになる部下である。ユーシアの顔を覗き込んだ少年は、彼の無事を確認すると「平気そうですねっと」と呟く。


「外に一人でお昼寝してると、化け物に食われますよ」

「あれー……元の世界に戻ってきたー?」


 ユーシアが寝ぼけたことを言うので、部下の少年は「はあ?」と眉根を寄せる。


「アンタ、まだ頭が眠ってるんですか? 頭でも叩きます?」

「やめてやめて、その手に握っている硬貨をどうにかして」


 部下の少年が硬貨を拳に握り込んだのを確かに目撃し、ユーシアは殴りかかってこようとする部下を押し留めた。

 大人しく部下の少年は引き下がったが、彼がなにか紙のようなものを握りしめていたのを確認して「なんです、それ?」と問いかける。


「? 紙かな」

「絵みたいだけど」


 部下の少年に促されて握り込んでいた紙を広げると、そこにはやけにリアルな人物画が写っていた。

 七人のうち一人はユーシアだが、彼は確かにこの紙に写った人物の名前を全て言える。


「俺の友達かなぁ。いい奴らだったよ」

「イマジナリーですか?」

「俺の扱いが酷くない?」


 じろりと部下の少年を睨みつけ、ユーシアは丁寧に人物画を胸元にしまい込む。

 すぐそばに転がっていたスキットルの蓋を開き、中身を呷る。熱い液体が喉の奥に滑り落ちていき、ユーシアは「くーッ」と呻く。


「いやー、これが俺にとっての幸せだねぇ」

「なに言ってんすか禁酒しろし」

「やだやだやだ!! 俺から幸せを奪わないで!!」


 スキットルを奪おうとする部下の少年から酒の入ったスキットルを守るユーイルの悲鳴が、ガタガタと揺れる装甲車の中に響く。

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