第30話 夜明け




♡日吉は突然やってきた黒いスーツの男性をおいかけ歩道で話をしている。

それは、家族にとってとても大切な話、もちろんマキノにとってもね。♥




「小海さんのことですが、芸能活動をされていて。

「夢愛佳で」の名前で活動されていたのですが、事務所のゴタゴタで移籍を余儀なくされまして。


 ちょうどその頃、高島という男性とご結婚されています、ご結婚と一緒に改名されそのお名前が「高島愛佳さんです。」




「たかしま、あいか、だって。」




「はい、そうです、色々と苦労されたみたいでお腹にお子さんを宿して芸能界を引退されました。それから、自分の子供と一緒に生きて行く決心をして、飲食店で働かれていたそうです。」




「小海に子供がいたんですね。」




「小海さんが当時親しくされていた元歌手の方からの情報なんですが。

住み込み先のご夫婦が愛佳さん、いや小海さんにどういうご縁か気をかけてくれたみたいで、長年彼女を援助してくれていたそうです。


 小海さんは娘と二人で慎ましく飲食店の二階で住み込で暮らしておられたようですが、娘さんが小学生のころ、突然の病で息を引き取ってしまわれたみたいで………その残されたお子さんの名前が。」



「高島マキノだよな、そうなんだろ!」



「なぜ、ご存知なんですか!お話続けたほうがいいですかね?」



「ああ、教えてくれ。」



「それからマキノさんは擁護施設に入り芸能界入りしてアイドルグループに

加入したまでは足跡はつかめたのですがここ1年くらいで東京から離れたみたいで。

 まだ消息がつかめていません。娘のマキノさんを見つけ次第、報告しょうと思ったんですが、なぜか、早く伝えないといけないと思いまして。




「小海!俺が力づくでもおまえを連れ戻したらよかった!」





♡小海の死を聞かされた日吉はアスファルトに膝をつき泣き崩れていた。

強く噛んだ唇から血がにじんでいたの。♥





「あんた、本当に調べてくれてありがとな。高島マキノのことはもういいよ。」



「なぜです?」



「さっき見たろ、厨房で玉子を焼いていた女の子。あのこがマキノちゃんだよ。

 ひとりで帰ってきたんだぜ、土砂降りの雨の夜、自分の二本の足でここまで帰ってきたんだよぉ。


あの日ずぶ濡れになって、俺が出した味噌汁のみながらよぉ、

わんわんないていたんだ。赤ちゃんみたいにさ。」





♡日吉はマキノが竹生にやってきた頃から、東京の知人を頼って探偵を紹介してもらい小海のことを探してもらっていたの。

 年老いていく浜へ一日でも早く小海の顔を見せたくて、竹生に帰ってくることだけを望んでね。もっと早く探していればと自分を責めて泣いているわ。♥





「…日吉さんどうしたのかな?帰ってこないなぁ、玉子焼けたちゃった。」


「日吉、変な男を見て深刻そうな顔してやったけど何やろ?」


「あれって、借金取りとかじゃないんやろね、なんか黒づくめやったで。」


「珠ちゃん、怖いこと言わんといて。」


「あの、玉子焼けましたけど、誰か食べます?」


「ほんま、ええ匂いやね、玉子焼が焼き上がり莉央がメンバーの席に持って行き、マキノが奥座敷にもっていく。」


「はいできましたよ、冷めちゃうし、日吉さんの分はまた後で焼くね。」


「おいしい!なにこれマキノちゃん! すごいやん!」


「ほんまや、これってプロの味や、ていうか、日吉君が作ったみたい。」


「どれ、どれ、うちも頂戴、えっ!これって。」




♡浜はマキノの玉子焼を口にいれた瞬間。味が、永吉の焼いていたものと同じだと気付いたの。そして視線の先にはマキノの胸元で光る、あのペンダントが見えたんだ。♥





「マ、マキノちゃん!そっ、そのペンダントどうしたん?」



「これですか? 10歳の誕生日に母からもらいました。」



「こ、小海やぁ、小海、帰ってきてくれたんや。」



「えっ?さっきも言われましたけど、そんなに私って小海さんに似ているんですか?」



「うん、うちらも初めは目をうたがったんたけど、マキノちゃんほんま小海ちゃんに雰囲気が似てるんよ。」



「でも、あたしのお母さんの名前は愛佳でけど。」




♡マキノが愛佳と母の名言うと、「ガラガラ」っと玄関の扉が開き

涙顔の日吉と黒服の男が、店に入ってきたの。

日吉はくしゃくしゃの顔でマキノを見つめながら。♥




「マキノちゃん、勝手に調べてごめん、マキノちゃんのお母さんの本名は…


今津小海なんだよ!」



「……えっ?どおいうことですか?」

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