6月17日(月)

 最近になって、文化祭に向けて明るかったクラスの空気がおかしくなってきた。


 最初は、みんな早めに大学受験の事を考える様になりピリピリし始めたのかと思ったが、どうやらそうじゃない。



 それを確信したのは、6月17日の月曜日だった。



 淳子の机に、これ見よがしなラインストーンの装飾と共に、大きな文字が黄色で書かれていたのだ。




「人殺し」




 この机に張り付いたセンセーショナルな言葉は、教師が到着するまでの1時間弱、クラスメイトだけに止まらず他のクラスの野次馬たちの目にも晒され続け、学年中が奇怪な現代アートの様な机の話題でもちきりなった。



 当然のごとく朝のホームルームで犯人探しが開催されるも、犯人が名乗り出る事はなく、事件は机をまるごと交換する事でとりあえずは保留になった。

 そもそも名乗り出る様な犯人なら、あんな手間暇をかけるわけもない。



 クラス中が犯人探しでもちきりなっている中、当の本人である淳子はというと全くのノーダメージのようで、何事もなかったかの様に笑っていた。


 休み時間でも彼女を気遣い声をかけてくる女子や、机の交換を手伝ってくれた男子に向かって「ありがとうね!」などとお礼を言い


「本当びっくりしたー!なんか悪い事しちゃったのかなー!うーん」


 とおどけながら、「あ、こうしちゃいられない!」と今回の「頼み事」である文化祭の準備に精を出してたところを見ると、本当に大丈夫な様でひとまずホッとした。



 ずっと見つめ続けてきた僕が思うのだから、きっと間違いない。

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