第11話 王城/セスナ視点

「セスナさん、ここがこの国の王が住む、お城になります」

 セスナは付き人妖精からその言葉を聞いてそびえ立つ城をつまらなそうに少し眺めていた。そしてすぐに前を向く。

目の前には二人の兵士が門を守るように立っていて、セスナに「どなたでしょうか」と聞く。

「私は、サイトウ・セスナ。国王に用があってきたわ」

兵士たちは「さようでございますか」とすぐに道を開け、門を開いた。

 城の中に入ると、周りにいる使用人からはもの珍しい目で見られる。黒い瞳と黒い髪はこの世界では目立つのだ。

なんとか視線をかいくぐり、王の待つ部屋までたどり着く。側近がすぐに話を通してくれたようだった。

「おお、セスナ嬢。待っておったぞ」

 うさんくさい。戦時中だというのに口髭をたくわえていて、身の回りのものは豪華絢爛。

それはともかくとして、私が王城に招かれた理由。それは……

「セスナ嬢、その強大な魔力量を察するにこの戦争はお主がいる軍の勝利で収めることが出来るであろう。したら、セスナ嬢は英雄として君臨できるはずじゃ。どうか、王国軍に加わってくれないかの?」

強大な魔力を持っていることは自分でもわかる。けど、これを人殺しのために使う、なんなら元の世界でいう「核兵器」みたいな感じで使うなんて。そのことをこの王は理解できているのだろうか?

セスナが断ろうと口を開いた瞬間だった。

「最鋭レイウス様がレジスタンス軍の最鋭リュオスにより大怪我を負ったとのことで」

 それはさっきの側近の慌ただしい声であった。王は状況を少しづつ把握し、徐々に険しい顔になる。よっぽど悪いことでもあったのだろうか。怪我人が出たら確かにこうなると思うが。

「なぜ、レジスタンス軍に最鋭クラスがおるのじゃ!?」

「国王様、それは状況がはっきりしてからお伝えいたしますが、とりあえずこれを民に伝えたほうがいいかと……」

「そうじゃの。セスナ嬢、すぐにでも戦えるように用意をしておくのじゃ」

 王と側近は慌ただしく出ていってしまった。この部屋には、セスナと付き人妖精だけしかいない。

だが、その扉の向こうにはもうひとり、人がいたようだ。

「セスナさん、ですね。やっと見つけました」

 そう言って入ってきたのはフード付きのマントを羽織った人だった。小柄ではあるが。

「私の名はケルアと申します。以後お見知りおきを。セスナさん、そして大精霊様」

 ケルアはそう言うとフードを取った。特徴は茶色の髪の毛。そして、エルフのように長く伸びた耳はまるで私の付き人妖精と似ている。それにしても……

「ケルアさんはどうしてここへ?」

「あまり時間がないので簡潔に。戦争は終盤になってきています。あなたはまず、間違いなくこの戦争を動かせる人であると思います。それは、平和的な終戦を迎えるためにも」

「戦わなくても、大丈夫なんですか?」

 私はその言葉に希望をこめる。私は戦争に関わりたくない。苦しむ人をたくさん見てきたから。

「戦わなくても大丈夫です、それにあなたなら戦争から人々を救うことが出来ると思っています」

「……分かりました。私はどうすればいいですか?」

「逃げてください。一刻も早く。そして、それからのことは大精霊様が教えてくれるはずです」

 ケルアがそう言うと、彼の言う通り私は逃げ出した。後ろではケルアが誰かと対峙しているようだった。

「最鋭、ミュルドー。あなただけは、ここでなんとかします」

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