第9話 セスナ

 森に戻ると、2通の手紙が机の上に置いてあった。片方はレリィから。もう片方は……、

「セスナ?誰のことだ?」

ケミンズが不審そうにこっちに聞いてくるものの、僕にもあてはない。

 とりあえずレリィの手紙を読んでから、セスナの手紙を読むことにしよう。


ー親愛なるケルアへー

 精霊族の集落は人間が戦争を始めたとなって少しピリピリしているわ。アリミアは私達と一緒に来てることと、神官の服のおかげで攻撃対象にはならなかったみたいだけど。

 私達は安全なところへ避難ができたから良いけれどそっちは大丈夫?

 噂によれば、ものすごい魔力を持った人間がいるらしくて、どこか別の世界から転生した?っていう情報もあるわ。

 まあ、不安になることはたくさんあるだろうけど、無理しないで精霊族を頼ってもいいのよ。

ーレリィよりー


「ものすごい魔力って精霊族が言うくらいだからそれはもう魔力量は圧倒的なほどありそうだな」

「転生してきたっていうのも気になるけど、それだけの強さがあれば一騒動は起こりそうだね」

それよりも、セスナの日記だ。正直罠なんじゃないかとヒヤヒヤして開けたのだが特に危害を加えては来なかった。


このもりは、なんだかすごくおちつく。そらをみあげればこもれびが、まわりをみわたせばどうぶつたちが。あんまりながくいられないのがざんねんだけど、ここのぬしにはおれいをいいたいな。

なので、てがみをおいておきます。ありがとうございました。


ーp.s.ー

 私は大変な間違いをしてしまったのかもしれません。今は付き人妖精として彼女を見守っています。彼女はおそらくすごい悩みや葛藤を抱えているのでしょう。おそらく、有り余るほどの魔力のせいで……

ーセスナよりー


なんだろう。とても読みづらい。それに、追伸の方はセスナが書いたわけではなさそうだ。筆跡が違いすぎる。しかし、追伸の方の文字は何かで見たことがあるような気がするんだけど……?

「よくは分からないけどさ、ケルアの魔力のサーチで探ったりとかできないのか?こんなけ魔力が強いっていうのなら、何かしらの手がかりが掴めそうだが」

「付き人妖精がいるくらいの魔力になってくると強すぎて逆にこっちの魔力が張れないことの方が多いよ。試してはみるけどね」

魔力量で負けたとしても、何かしらの手がかりだけでも十分な成果だ。魔力を徐々に……。

「なんなんだよ……」

魔力が吸い込まれてゆく。いや、膨大すぎる魔力の渦に巻き込まれているのかもしれない。

 どちらにしても、魔力でどうにかしようとするのは危険すぎる。森を守る以前の問題だ。

「実際にセスナに会ってみる必要がありそうだね。間違いなく、今後の戦況に関わってくるから」

ケミンズもその魔力を多少なりとも感じ取ったのだろうか。何も言わず、彼女は強く首を縦に振った。

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