第3話《入学式の朝》

太陽の光を感じ、目を覚ます。

今日はついに浜野高校の入学式だ。

いつもと同じ時間に起きたが、ドキドキする。

やはり新しい学校になって、新しく人と出会うというのは、楽しみもあるし、不安もあるものだ。

そんなことを考えているとドアがノックされた。

考えるまでもなく、ノックしたのはおそらく文加だろう。

親父はこの時間にはいつも寝ているのだから間違いない。


「お兄ちゃーん。起きてるー?」


「おはよう、文加。起きてるよ」


「おはよー。ご飯できてるから着替えて降りてきてねー」


「りょうかーい」


文加にそう言われ、真新しい制服に着替える。

新しい制服に着替えると、高校生になったという実感がわく。

着替え終わり、部屋にある鏡に自分の姿を映してみる。


「うん、いい感じだな」


見た感じ、やはり中学とは違うので若干違和感はあるが、かっこ悪くはないだろう。

自分の姿を確認できたので、朝ご飯を食べるために一階のリビングに向かう。

ご飯は、母さんが死んでから、ほとんど文加が作っている。

たまに俺が手伝うこともあるのだが、その回数はたかが知れている。


「お兄ちゃーん!早くしないと初日から遅刻しちゃうよー!」


「分かってるよ。改めておはよう、文加」


「うん、おはよー。早く食べてねー」


「おう。いただきます」


今日の朝食は食パンとスクランブルエッグ、そしてサラダと牛乳だ。

これがなかなかに美味い。

スクランブルエッグに関しては、もうホテルで出るのと遜色ないレベルまで達している。


「悪いな文加。いつもご飯作ってもらっちゃって」


「え?いきなりだね~。全然大丈夫だよ。でも私が受験生になったら流石にお願いしようかな。私ももう中二だしねー」


「そうか……文加ももう中二か……。分かった。来年は任せとけ!」


「うん!期待しとくよ!」


確かに受験生になったら、勉強で忙しい。

俺も経験したことがあるからよく分かる。

文加は成績が良いというわけではないので、結構苦労するだろう。


「勉強、頑張れよ。文加」


「うん!っていうかそろそろ行かないと待ち合わせ時間に間に合わないよ。お兄ちゃん」


時間を見てみると、シンと決めた待ち合わせ時間まであまり時間は残されていなっかた。


「ヤッベ!ごちそうさま!行ってきます!文加も親父起こしてから遅れないように出ろよ!」


「はーい。行ってらしゃーい」


俺は家を出て、シンとの待ち合わせ場所である、東千葉駅に急ぐ。

シンの家は俺の家とは近いが、行くには東千葉駅をこえなければならない。

だから東千葉駅を待ち合わせ場所にしたのだ。


「ハッ……ハァっ……つ、着いた……」


「お!来たか。おはよう、ユウ」


東千葉駅に着いたら、すでにシンはいた。

まぁ、五分ほど遅れてしまったので当たり前なのだが。


「す……すまん……。遅れた……」


「まぁ、学校に遅れなければ大丈夫だからさ。ほら、もうすぐ電車がくるぞ」


「……ギリギリセーフかっ……アブねぇ……」


改札を通り、ホームに向かう。

ホームに着いたらちょうど千葉行きの電車が来たので、それに二人で飛び乗った。


「総武本線そうぶほんせんで千葉駅まで行ってから内房線うちぼうせんに乗り換えて浜野駅で降りるんだよな?」


俺は念のために、シンに尋ねる。


「そうだな。ま、東千葉から千葉まではすぐなんだけどな」


「そうなんだよなぁ。これなら歩いて千葉まで行ってもいい気がするな」


「まぁ、千葉から浜野までもそこまでかからないんだけどな」


「大体十分ぐらいだったけ?」


「ああ。だいたいそんなもんだな」


電車を使うようになり、新しくなった通学路の確認をしていると、あっという間に千葉に着いていた。

相変わらず、地味にでかい駅だ。


「よし。降りようぜ、シン。ここで乗り換えだろ?」


「ああ。その通りだ。俺に着いてくれば問題ないからな。こっちだ」


本当に、シンは頼りになる。

母さんが死んだときもそうだった。

しかし、いつまでもシンに頼っていてはいけない。

俺も少しは自分で頑張らなければ。


「いつもありがとな、シン」


「な、なんだよ……急だな。どういたしましてって言ったほうがいいのか?」


「ああ。これからもよろしくな」


「お、おう……なんか、気持ち悪いな……」


「うるせー!ほっとけ!」


俺は赤くなった顔を隠すようにして早足に内房線のホームに向かった。

このとき俺は、初恋はできる限り自分だけで頑張ろうと思った。


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