ハッピーバレンタインの回

※多少のキャラ崩壊、メタ発言ございます。ギャグ回だと思い、時系列などはあまり考えず読んでいただけると幸いです。










なんという罰ゲームか。

こんな突拍子もないタイミング(話数)で、、灯から


「攻略対象たちにチョコあげてきてねってか渡してこいやあ!!って上からのお達しがきてる気がする…」


というメタ発言をされてしまったためにチョコを作る羽目になった。


まったく、上のやつらめ…この手間どう返してくれる…!全員に渡せたら私の死亡フラグ回避一回券ってのはどうだろう。うん、悪くないな。それでも要求しようかな。


ということで全員分作り終えましたとも!あとは渡しゃいいんだろ!!






〇 夕島輝也(隣人・元護衛騎士)の場合


とりあえずは一番すぐ会える隣人からだろう。


ーーピンポンピンポーン


「はい、チョコです。」


前のめりで出てくる輝也の顔に包装を押し付ける。


「ああ儚日ちゃんおはよ…ええ!!いいのー!?ありがとう!!家宝にするね!」


玄関先でギューッと両手に私のチョコを抱きしめる。恥ずかしいからやめてくれ。


因みに会いに行けるイケメンに渡したのは普通に固めたチョコだ。くまさんがナッツを抱えたみたいな形になってる…まあ型に入れればどうにかなるやつ。この人にはこれくらいでいいかってなった。


「しなくていいですよ。食べてください。」


「なんでよー。せっかく儚日ちゃんからもらえたやつなのになあ。」


もっと力強く抱きしめる。いやいやいや、やめて!!これくらいでいいかって作ったやつだから…そんな大事そうにされるとなんか申し訳なくなるから…。


「あ、じゃあ儚日ちゃんには…これね!」


部屋から一際可愛らしい紙袋持ってきて私に渡した。


「え、なんですかこれ?」


「儚日ちゃんのためにフォンダンショコラ作っちゃった。結構頑張ったんだよ?」


こいつ…!!ニコニコしながら目の前にいる女より女子力高いものを寄越してきた。エグい…エグすぎる。


「ハッピーバレンタイン!儚日ちゃん。夜ご飯張り切っちゃうから学校頑張ってね〜!」






〇 茗荷谷エル(生徒会長・元学友)の場合


続いては以前から最新話に至るまでヤキモキさせられている生徒会長だ。まあ大体あいつは生徒会室に行けば会えるだろう。朝早いがきっといるはず…


ーーガラガラガラッ


「あ〜儚日ちゃんおはよーう!!今日も可愛いね。」


「あ、遊里先輩もいる。ちょうどよかった。」


なんと珍しい、引退したはずの遊里もいた。相変わらずの王子様オーラだ。昔は怖かったけど今は大分やわらかい印象だ。


「おはよう儚日。珍しいな、ここに来るなんて。」


「俺のことは相変わらず無視ですか。そうですか。」


とてつもない高さに積まれた紙の束に猫の手も借りたい状況、といった感じだ。そんな中なのにそれよりも私に無視されていることに拗ねているバカがいた。


「ほら、拗ねないでください。エル先輩にチョコ持ってきたんですよ。遊里先輩にも渡そうと思ってたので、ちょうどよかったです。…ただ彼女さん嫉妬しちゃうかな?」


二人に出したのはトリュフチョコだ。二人の髪色に似せて色違いにしてみた。これは、うん少し頑張ったと思うんだよね。


「はっ儚日ちゃんが…俺に!?チョコを!!!!????はわわわわ!!!」


出会った頃からは想像もつかない。漫画みたいに椅子からひっくり返ったエル。


「おいおい、パニックになるな茗荷谷。そうだな、儚日の言うことも一理ある。結構その…彼女は嫉妬深くてな。俺の分も茗荷谷にやってあげてくれないか。申し訳ないが。」


「ええいいんですか先輩!?儚日ちゃんも、嘘じゃないよねえ…?」


まあなんとなくそれも予想していた。


「やっぱそうですよね。ってことではい、これねエル先輩。受け取ってください。」


「あ、ありがとう…。」


耳が真っ赤だ。わかりやすい。上からのお達しで作ったが、これなら作ったかいがあるってもんだ。





〇 鬼丈楓(同級生・元婚約者)の場合


教室に入ると二人が鉢合わせていた。


「おはよー鬼丈くん!おおお、今年は豊作のバレンタインですな。いいなあ私も食べたい。」


「だーめだ。気持ちこもったもんなんだから、ありがたく食うんだよ。」


こりゃまた、生徒会入ったからだな。山積みのチョコレートとそのまた机の脇に袋いっぱいにチョコレートが。


「すごいね、何これ。」


「おはよう!はーちゃん!」


「よー、結構もらっちまってな。こんな貰えたの初めてだよ。」


エルも遊里もチョコはもらっても受け取らないし押し付けられたものは処分してしまうため、受け取ってくれて処分もしないむしろ笑顔で受け取ってくれる楓の人気は高まる一方だ。


「荷物一個増やしても怒らない?」


「はあ、お前今日に限って貸した漫画返すとか言わねえよな?」


「違う違う。これ。」


ポンと袋を渡す。楓と灯にはチョコレートマフィンを用意した。


「…え?お前、菓子とか作れるようになったのか?」


「はーちゃん私にもくれるの?嬉しい!!」


他の子には神対応なのに私には嫌味で返してくるのは気に入らないなあ。ただでは渡さないぞこら。


「いらないなら灯に全部あげるけど?」


そう言って灯に全部渡そうとするとパシッと一袋奪われた。


「いらないとは言ってねえっての!!…ありがたく受け取っとくよ。」


その後の授業で楓の席から漂ってくる甘い匂いにクラスの男子たちの視線が集まる集まる。モテ男はつらいねえ。






〇 桜井宣明(公安委員長・元魔剣士)の場合


もう放課後だ。久々に来る委員会の部屋。


ーーガラガラガラッ


「お久しぶりですー。」


「猫谷さんじゃないか!!久しぶりだね!」


食い気味で入ってくる、桜井先輩。後ろの方で俺もいますよーと忠野先輩。


「最近は行けてなくてすみません。で、さっそくなんですがチョコを。」


有無を言わさない。この辺は今後の本編でどうにかするから、多分。とりあえずこの二人に用意したのはスコーンだ。まあ一番簡単っちゃ簡単なやつね。しかしこの二人(主に桜井先輩)は目を輝かせている。


「本当にいいのかい?いやあ、鬼丈くんに申し訳ないなあ。でもせっかくということだし、貰っておこうかな。いやだってね、猫谷さんがせっかく作ってきてくれたんだ。貰わないわけにいかないじゃないか。」


いつもの倍くらい饒舌になっている気がする。というか同じことを反復している。


「桜先輩、茗荷谷のやつとチョコの数で勝負してたんですよ。まあ向こうの圧勝なんすけど…あんたからのチョコってやっぱポイント的には高いじゃないですか。てか桜先輩今年一個目だし。」


最初会った頃は頼りになる人だと思っていたが知れば知るほどとポンコツ率高めだなこの先輩。


ガラガラガラッ


おっとこの部屋に二人目の来客だ。


「忠野くんいますか…って猫谷儚日!?なんでここにいるの!ま、まさかあなたも忠野くんにチョ、チョコを!?」


入ってきたのは寺島冬子。このパニックっぷりさっきどこかの生徒会室で見たな。お前たちは兄妹か。よく見ると手に可愛らしい袋を持っている。おっと、これはおじゃま虫かな?私は察しのいいおじゃま虫だぞ。


「違う違う。お世話になってる皆さんにチョコ渡してただけだよ。…じゃあ私はこれで失礼しますね。忠野先輩、いらなかったら桜井先輩にチョコあげちゃってください。」


「ありがとう猫谷さん!」


「え、ああ了解っす。島ちゃんまた来たの?どうしたの今度は…」


「それじゃ、失礼しまーす。」


いやあ、ここでちゃっかりフォロー入れちゃう私…完璧だわ。それじゃあ頑張ってね冬子ちゃん。恋する乙女の一世一大イベントの成功を心の中で検討を祈りながら扉を閉じた。






〇夕島蓮(友人・元ヒロイン護衛騎士)


蓮に連絡を送ると、なんと今日は珍しい輝也の家にいるらしい。三人で夕食なんて初めてだ。なんだか不思議な感じ…。そのまま朝行った部屋に帰る。


「おかえり儚日ちゃん!」


輝也は夕食の支度をしているようだ。


「おーおかえり。びっくりしただろ。俺がアニキの家いんの。」


ニカッと笑うのが特徴の蓮の荷物は少し甘い香りがした。


「意外とあんたがモテることにも驚いてるよ、私は。」


「まーあ?この顔だからなあ。アニキは断るタチだけど俺は貰えるもんは貰っとく派なんで。」


すんごいここに見せられないのが悔しくなるくらいのドヤ顔。ウザい、ウザすぎる。


「聞いたぞ、アニキにはやったんだってな。お前は俺にはくれねえの?」


「ほら、あんたにはこれ。」


「え…?お前、女子力ないにもほどがあるだろ。」


私はポ〇キーを渡した。…もうレパートリーというか、時間がなかったのだ。


「お前にはこれくらいで十分だって。さすが儚日ちゃんだな。」


「さすがにひでえよ。」


「うん…これはごめん。」


その後みんなで輝也のご飯を食べてからポ〇キーをポリポリ分けた。市販っておいしい。




ーーその次の日、目を開けると枕元に生チョコが入った袋が置いてあった。


〝お疲れ様でした。意気揚々としていたはーちゃんを騙すのは少し心が痛かったけど見ていてとても楽しかったです。

死亡フラグ回避チケあげたかったのですが、これで我慢してください。

灯〟


いや、お前かい!!!!


これにて閉幕、てんてん。

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