陽炎やその坂道の名は知らず

【読み】

 かげろふやそのさかみちのなはしらず


【季語】

 陽炎(三春)


【大意】

 坂道に陽炎が燃えている。その坂道の名は知らないが。


【附記】

 荒井由実の「ひこうき雲」の歌詞に似ている。


 なお、柿本人麻呂(?-708頃)の「ひむがしの野に陽炎かぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」の「陽炎」は明け方の空の明るみをいう由(大辞林 第三版より)。


【例句】

 丈六にかげろふ高し石の上 芭蕉

 陽炎や身をほす海士あま日向ひなたぼこ 朱拙しゅせつ

 かけろふやほろほろ落る岸の砂 土芳とほう

 陽炎のもえて田にちる椿かな 曲翠きょくすい

 かげろふの身に付添ふや不動坂 玄梅げんばい

 かげろうの生るる土のにほひかな 存義ぞんぎ

 陽炎や景清かげきよ入れしほらの口 太祇たいぎ

 陽炎や名もしらぬむしの白きとぶ 蕪村

 古草に陽炎をふむ山路かな 大魯たいろ

 陽炎のもえて地にたつ松葉哉 白雄しらお

 まさごや陽炎をおふ波がしら 几董きとう

 陽炎や目につきまとふわらひ顔 一茶

 揚げ土に陽炎を吐く田螺たにしかな 村上鬼城

 ちらちらと陽炎立ちぬ猫の塚 夏目漱石

 兀山はげやまや陽炎のたつ思ひあり 正岡子規


 歩行かちならば杖つき坂を落馬かな 芭蕉

 つづくりもはてなし坂や五月雨さつきあめ 去来きょらい

 鶯や雨少し降りて衣紋坂えもんざか 夏目漱石

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