第19話

「フォン・クロイス准将久しいな。」


「お久しぶりです。ルーデンドルフ上級大将閣下。遅まきながら昇進おめでとうございます。」


「ローメル大将は既知のはずだな。ローメル大将を司令官とし南方植民地軍と本国軍から第6装甲集団を持って帝国軍H軍集団を編成する。ロクソニア旅団には南方での活躍を期待したい。」


「成程、ノルマルディア方面での再編と訓練は欺瞞ですか。ご命令とあらば否応はありません。」


「ヨハン、合州国の介入は君の予測した破滅的な総力戦の連鎖に入るのだろう。」


語尾は質問だが答えではなく求められているのは策。


「残念ながら連邦程の国力のあるを相手にしながら合州国の相手は不可能です。以下に共産主義を保つトファチェフスキーから帝国領を守り合州国へ降伏させ帝国守るかです。」


「必要案件は。」


「一定以上の軍事力の維持。恐らく合州国軍は共和国方面へと上陸をしてくる筈です。連合王国を向こうにつかせ、早期に上陸させ、帝国領を合州国に占領させます。その頃にはヨシフは見捨てて連邦に食わせてやります。連邦と合州国は100%否120%と言っても構わないほどイデオロギーから対立します。トファチェフスキーはレオニスト、世界革命主義だ、資本主義の本拠地かつ権化の合州国を認めるかとは思えない。戦後秩序は合州国と連邦の二頭体制でしょう。」


「同盟国はどうする。」


「秋津洲に対する参戦を名目に軍事力を残しましょう。決裂したとは言え合州国とルートは繋がってる。帝国の将来を損なう連中。赤のシンパは南方で使い潰します。ロクソニア旅団はカンネル大佐に臨時で指揮を任せます。増強大隊のみを引き抜き、南方で私の部隊の中核を。」


「全て裁可しよう。」


帝国軍を牽引する稀代の傑物。フォン・ルーデンドルフ上級大将閣下は苦悩していた。6年間に渡り帝国の戦争指導を担ってきた男は真剣に憂慮していた。共和国を打倒し、連合王国を降し、かの強大な連邦と互角に渡り合う帝国軍の雄。チャーチーやドルーゴ、ロルズベルトから化物、怪物と畏怖されるルーデンドルフ上級大将閣下は続く戦勝に浮かれ何も見えて居ない無能な将校連や赤、共和主義者まで多種多様。ルーデンドルフ上級大将閣下は帝室への忠誠心と愛国心は比するものも居ない。

俺のような何処の馬の骨とも知れない若輩の意見を聞き入れ俺に地位を与え、上手く使ってくれた。尊敬はしている。


「閣下、こちらを。」


今まで俺が出した作戦立案書はルーデンドルフ閣下名義。これは帝国軍魔導准将ヨハン・フォン・クロイスの名前で出してある。


「戦争終結に向けた諸作戦…か。」


「はい。閣下、1人に帝国の運命は委ねさせません。私も私の部下達も閣下とお供します。」


「…ヨハン、我らで帝国を救うぞ。」


「勿論です。帝国に再び黄金の時代を。」


「帝国に再び黄金の時代を。」


帝国軍は南方大陸に1個装甲集団と2個装甲軍団からなるH軍集団を編成。更に西方に駐留していたA軍集団等を俄に東方へ増派。

上陸してきた連合軍と帝国軍はトリポータニアで激突する。



吹き荒れる砂塵と夜に訪れる寒気。航空兵用のゴーグルを装備し新たなイェーガー戦闘団長として、1個増強魔導大隊、1個装甲大隊、1個自走砲大隊、1個空挺大隊とそれなりに大規模な兵士を率いて現在は同盟国イルドアの植民地トリポータニアに展開している。


「北部のアルジェ植民地を奪われた。無論奪還する。イェーガー戦闘団総員、祖国は危機にある。各位一層奮励努力せよ。」


『イェーガー02よりイェーガー戦闘団長殿、私達魔導大隊をお使い下さい。敵規模は2個歩兵師団。喰らい尽くして見せます。』


「やれ!」


何時ものごとくマリアのみを連れてきている。


「戦闘団長より各位、これより単騎で陽動に出る。任せる」

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