第3話 帰投

「マスターさん。

こちら、完遂しました」


フェルナンドが、一枚の依頼書をカウンターに差し出した。


カウンターの人物は、それを受け取る。



ここはギルド。


傭兵たちが集い、仲間を募ったり、依頼を受領したりする施設だ。


このような傭兵ギルドは各国各地にあり、国境を越えて傭兵達を支援している。


聖国家エルドロット。

聖地として高名なこの国でも、魔物の襲来を受け、傭兵業が急速に発達している。



“マスター”と呼ばれた男は、依頼書に手をかざした。


滅びない紙に、消えない青のインクで書かれた依頼書。

マスターの意志に呼応して、青い文字が光を放つ。


遠視の魔法─────。


各地のギルドマスターは、こうした離れた場所の様子を見る魔法で、依頼の達成状況を確認し、傭兵達に規定の報酬を渡すのだ。


やがてマスターは、ひとつうなずく。


「はい、確認しました。

報酬、金貨10枚分ですね」

「あ、銀貨でください」

「銀貨100枚で、承知しました。

少々お待ちを」


マスターが奥の棚から銀貨の束を取り出し、フェルナンドに渡す。


フェルナンドはそれを数えて────

「確かに。ありがとうございます」

また、顔を上げた。

「マスターさん、次の依頼をいただきたいんですが…」


マスターは、かぶりを振る。

「とりあえず休んでからにしなよ。

また死んだんだろ?フェルナンド」

口調を崩した彼は、にやりと口角を上げた。


「あ、あはは、まぁ…すみません」

「ったく…

いい依頼見繕っとくから、大事にな」

「ええ…じゃ、お言葉に甘えて」

「ああ。お疲れさん」


フェルナンドは、エントランスで待っている仲間のもとへ、足早に戻っていった。

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