Vampire night(4)
「随分仲良くなったものね?」
目の前でパイプ椅子に腰掛け、腕と脚を組んで僕を見下ろす。
緩く結った艶やかな黒髪を左の肩から下ろし、口元のホクロはこの美少女のもつ色気というか妖艶さを醸し出している。
現役生徒会長の
何故か生徒会室に呼び出された僕は椅子があるにも関わらず床に正座させられていた。
「あの、色香さん。なぜ僕はこんな仕打ちを受けているんでしょうか......」
ぐぬぬ、と耐えながら色香さんの主語のない問いに答えることなく打開策を模索する。
組んだ腕の上に胸がたぷんっとのっているのを確認した直後目をそらす。
「あら、
「ちょ、勘違いされるようなこと言わないでよ!」
「これだけ視姦しておきながらよくそんなこと言えるわね」
「言い掛かりにも程があるっ!!」
昼休みに急に呼び出されたかと思えばこの仕打ちである。言い掛かりでは......ないかもだが。
「まあこれくらいにしておくわ。それで、エルフちゃんとは何があったのかしら?」
指で髪をくるくると弄ぶ。キョロキョロと落ち着かない様子だ。
「あー......えーと、かくかくしかじか」
大まかな事情を話すと、話が進むたびに色香さんは顔を曇らせていく。
【エルフ】が絡む事情を除くと、ただただ僕が格好つけただけの話しになってしまう。
ほんとはあまり話したくないけれど、同じ部活で過ごす中で、急に訪れた変化を何の説明もなしにとはいかなかった。
「なるほどね、そういうこと。ハセガワくんはスケベな上にすけこましなのね。手に負えないわっ」
「僕の評価が急転直下すぎるっ?!」
「あのタイプは懐いたら一途よ。......やっかいだわ」
「懐くってペットじゃないんだから」
そう言いながらも以前同じことを考えていただけに強くは言えないが。今のエルフさんはワンコに近い。【エルフ】がワンコとはこれいかに。
※※※
今日は酷い目にあった。
ワンワンなエルフさんと駅まで一緒に帰り、電車を降りる。
家に向かって歩いていると背後から、男女の驚く声が聞こえてきたので振り返ってみると、
「うぁっ?!」「いった!」「な、なに?」
「はやっ!」「忍者みたい!」「危なくない?」
足音すら立てず、上半身を地面と平行にしながら人と人の間を縫うように疾走する影2つ。
あれは、この前の女子校生2人組?黒みがかった臙脂色の髪がこちらに向かってくる。
「邪魔邪魔邪魔邪魔ァアアアア!!どきなさい、怪我するわよ!」
「ん。おねぃちゃん。元気。」
セミロングの方が弓のように口角を吊り上げながら、ショートカットの方は一切表情を崩さないままこっちに向けて突進してくる。
「うぉ?!ぇえええええ?!ちょ、待って!」
腕を構えて衝撃に備える。隙間から様子を伺うと、目の前を交差するように過ぎ去っていった。
「あだっっっ?!」
あまりの勢いに思わず尻餅をつく。
「なんなんだいったい......」
女子校生2人組の方向へ体を向き直すとシュンシュン!と風を切って進んでいく背中が僅かに見えた。
(ほんとに人間かよ......)
未だに僕の背後では人々の動揺や興奮が背中越しにも伝わってきていた。
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