第20話 こうした日々の研鑽こそが、変態道を極めるために大切なことだと

「きゃあっ」


 朝の清掃を終えて、朝食の準備をするメイドたちのミニスカートを捲り、バストタッチを繰り返すのは、このお屋敷に来てからの日課だ。


 こうした日々の研鑽こそが、変態道を極めるために大切なことだと、父と母も言っていた気がする。


「王子さまってほんとうに『おっぱい』や『パンツ』がお好きなんですね。

 ちっちゃな子どもがするようなイタズラに興じている姿は実に微笑ましいです」


 明らかに作り笑いだとわかる笑みを浮かべ階段を下りてきたのは、メイド服姿のありさちゃんだった。


「朝食の準備ができましたから、理沙さまを呼んできてくだ……きゃん、ヒトがしゃべっている時に、おっぱいを揉みのは、さすが……きゃんっ。

 へ、ヘンなところを触らないでください」


「脇のしたは、ヘンなところじゃないよ。

 おっぱい好きにはたまらない場所だよ。

 正面から触るもいいけど、横乳をツンツンするのも最高なんだよ。

 それから下乳も――――」


「いつまで、触っているつもりですか。

 早く、理沙さまを呼んできてください。

 八つ裂きにしますよ」


 いつもこんな感じで、ケンカ腰というか、当たり前のように悪口まじりで、もう反論する気にもならないほどだ。


「かしこまりました」


 ありさちゃんに向かって一礼をした後。


 俺は素早く姫川さんの部屋に向かった。


 赤い絨毯じゅうたんがしかれた幅広の廊下を歩き。


 重厚な鈍い輝きを放っているドアの前へ立ち、ノックする。


「姫川さん、もう朝だよ。

 起きて!? みんな食堂で待ってるよ。

 早く起きないと遅刻しちゃうよ」


 高級なドアに見合った重たいノックの音が響いただけで、返事はなかった。


 どうやら、まだ寝ているみたいだな。


 これは、また部屋に入って直接起こすしかないパターンか?


 部屋に入ってすぐに目に留まったのは、原型をとどめていない目覚まし時計の残骸だった。


 一応……起きる努力はしたみたいだな、偉い偉い。


 天蓋付きのベッドで寝ている姫川さんの頭を軽く撫でる。


「うぅっ……んぅ……」


 姫川さんは寝返りをうった。


 枕の上で乱れた髪、横になっていても目立つふたつの乳丘にゅうきゅう、なだらかな腹のライン


 ルーズな上着とカラダとの間に開いた空間がよく見える。


 豊満な胸の谷間。


 俺がいくら言ってもブラを着けようとしないのだ。


「姫川さん、朝だよ!? 起きて。起きてください。

 早く起きないと朝食を食べている時間がなくなっちゃうよ」


 そう叫びながら俺は、厚手だがまるで重さを感じさせない窓のカーテンを開ける。


「ほら、とてもキレイな朝日ですよ。

 そろそろ起きてください」


 これもダメか? なら、仕方がない。


 俺はベッドの横に片膝をつき、姫川さんの耳の裏側を舐める。


 彼女はくすぐったそうにした後、寝返りを打つ。


 さらに首筋も舐める。


「もう露璃村くん、くすぐったいよ。

 起きるから、起きるから、もうくすぐらないでよ」


 彼女は上半身を起こし、ベッドから出ると大きな欠伸をした。


「ふぁあ~~~、まだ眠いわぁ」


「おはよう、姫川さん。

 昨日もまた遅くまで本を読んでいたの?」


「ええ、そうなの。

 一度読み始めたら、もう夢中になっちゃって、寝るのも忘れて読みふけってしまったわ。

 おっぱいって、やっぱり奥が深いモノよね。

 私もおっぱいについては、詳しいつもりだったんだけどね。

 この軽小説ライトノベルには、私の知らないことがたくさん書いてあったわ。

 露璃村くんも一度読んでみたほうがいいわよ」


 薄手のパジャマ姿のまま姫川さんは、おっぱい大好きな男子高校生の日常と書かれた『ライトノベル』をすすめてきたので、つい、おっぱいの方に視線がいってしまう。


「ど、どこ見てるのよ、変態!?」


 姫川さんの回し蹴りが俺のわき腹に飛んできた。


「お姉ちゃん、まだ!? 寝てるの? 

 そろそろ起きないとほんとうに朝食を食べる時間なくなっちゃうよ」


 殺妹ちゃんの声が聞こえてきた。


「まあ、そういうことだから、俺は先に食堂に行ってるぜ」


 姫川さんからライトノベルを受け取り、俺は慌てて部屋を出ていく。


++++++++++++++++++++++


 食堂


「ルリエール。口を開けてください。

 あ~ん、って……」


「……むしゃむしゃ……美味い……。

もう一切れ!? プリーズ」


「もうしょうがないわね。

 はい、口を開けて」


「……むしゃむしゃ……やっぱりピザはネクストだな」


「ああ。口の周りをこんなにも汚しちゃって」


 食堂を訪れた俺は驚きの光景を目の当たりにした。


 なんとありさちゃんが甲斐甲斐しくルリちゃんにご飯を食べさせていた。


 俺の存在に気が付いたありさちゃんは、顔真っ赤に染めて!


「勘違いしないでよね。

 これはメイドの職務をはたしているだけだから」


「でもありさちゃんって、姫川さん専属メイドじゃなかったかな?」


「ええ、そうよ。

 でも、当主の補佐をするのもメイドの務めなのよ。

 それに理沙さまから直々に頼まれた仕事だもん。

 責任を持って務めるのは当然のことでしょ」


「コーラ、コーラが飲みたい」


「はいはい、コーラですね」


 口移しでコーラを飲ませていくありさちゃん。


「ああ見えて。

 愛理沙お姉ちゃんは、面倒見が良くて、責任感も人一倍強いですからね。

 適任なんですよ」


 朝食を食べ終えたちみるちゃんが声をかけてきた。


「へえ~~~。

 そうなんだ」


「露璃村くん。

 みちるちゃんとイチャついている暇があるなら、早く食べなさい」


「それは私のセリフだよ。

 二人とも早く食べないとほんとうに遅刻しちゃうよ」


「あっ!? もうそんな時間か」


 姫川さんと殺妹ちゃんが食堂に入って来た。


 そして朝食を済ませ、姫川さんたちと並んで登校する。

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