「浜辺に打ち上げられて」

 …気がつくと、ジョン太の視界は真っ白でした。


 右も左も、真っ白けっけ。

 それはフコフコとして柔らかで生暖か。

 ついでに口や鼻に毛の先っぽが入ってくるので…


「くしゃん!」


 ジョン太が大きなくしゃみをするとモフモフのパトリシアはぴょんと跳びのき我関せずといった顔で近くの砂の上に歩き出します。


 上半身を起こして見渡してみるとジョン太はどうやら海岸の砂の上にあおむけに寝そべっていたようで、乗ってきたヨットは影も形もありません。


 髪も手足も砂がべったりとつき、口の中はジャリジャリです。


「うへえ…」


 ペッペッっと砂とパトリシアの毛を吐き出すとジョン太はあらためて海の様子を見ました。


「あれ、嵐が…海の向こうに広がっている」


 海の向こうは大荒れです。


 しかし、雨雲はこちらへとやってくる様子はなくあくまで海の向こう側だけが荒れているようにも見えます。


「ねえ、なんだか変だよパトリシア。ここ、一体どこなんだろう」


 みれば海辺のあちこちで大きな船や小さな船が漂着していますが、どれも帆がなかったり、船底が壊れていたり…とても走れるような状態ではありません。


「難破船かなあ、パトリシア」


 ジョン太は立ち上がると何か手がかりがないかどうか周囲を見渡します。

 後ろは鬱蒼とした森につながっており背の高い草や木々が生えているようです。


 しかし、どこまでも続く緑は奥行きが見えず、また鳥の鳴き声も一切聞こえないことから、ジョン太はだんだんと不安になっていきました。


「なんだか怖いよ、パトリシア」


 ジョン太はイヤイヤするパトリシアをなだめながら抱き上げ、森を見ないようにしながら海岸線の周囲を歩いてみることにしました。


 ですが、そんなジョン太の不安もつゆ知らず。パトリシアは、ジョン太の腕から抜け出すと砂から出てきたカニにちょっかいをかけ始めました。


 それにジョン太はため息をつき、再び歩き始めましたが…数歩進んだところで歩みを止めます。


 …ジョン太の視線の先。

 そこには、ひと抱えはありそうな大きな宝箱が砂の中に埋まっていました。

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