第3話:俺があいつであいつが俺で(物理)

慎重に部屋から出ると正澄さんが小紅ちゃんを抱き抱えて立っていた。

「あの変わった衣はどうした?」

「あ、あれは畳んで風呂敷包みの中に入れたよ」

上に開けるべからずって書き置きを残しておいたと言うと正澄さんは思わず笑っていた。

「ぷっ…\\さ、佐吉と、同じことを…しているな…\\」

へーぇ…変わったこともあるもんだなぁ…

と思いながら俺は正澄さんの後を歩いた。

しばらく歩いて、正澄さんの笑いのツボが収まったのを待って聞いた。

「なんで正澄さんと、その佐吉の父上と母上のところに行かないといけないの…?」

すると正澄さんは少し複雑そうな顔をした。

「あ〜…さっきお前が木から落ちたのを父上が母上に言ったのだがな。それが…」

なんか分かったような気がする。

正澄さんが小紅ちゃんをしっかりと抱え直して言った。

「…父上ったら気絶しただけなのに大騒ぎして母上に何を言ったのかすら俺でも分からないんだ」

親父さん何を言ったんだ。

思わずそう思った。

「ただ、母上が佐吉が起き次第会いたいって言うほどだからな…本当に何を言ったんだ…」

そう言って正澄さんは眉根を寄せた。

…俺も頑張ろう。今は颯輝ではなくて佐吉として。

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