──第5話──
辿り着いた場所は、白かった。
床から天井、柱に至るまで白い空間。
どこかの聖堂を思わされる程、
細部にまで
神秘的って雰囲気はこういう感じの事を言うんだろうな。
長老は中心にある台座に俺を降ろした。
『サンルーク様。新たに我が一族となる子に加護をお与え下さい。』
音がどんどん小さくなり、やがて静寂が訪れる。
数秒後、目を閉じてしまいそうになる程の光が溢れ出した。
光は一つの場所に集まり、大きな光の
光の珠は、ふわふわと浮き、俺を挟んで長老の前に来た。
『───────。』
聞き取れない音が流れる。
それに向かい、長老は『はい。』と
そういえば、カインは『人間と聞き取れる言語が違う』って言ってたな。
これが、そういう状態なのか。
確かに言語としては認識出来ない。
ただの音。
風が吹く音、水の流れる音、葉が擦れる音、そして笑い声に近い音。
どの表現も合っている様で合っていない不思議な音。
でも不思議とずっと聞いていたくなる音が耳に残る。
一人思案していると、長老が言葉を発した。
『この子供はギルバート夫妻が育て上げると申しております。』
『───────。』
『はい。すでに我が神狼族の家族にございます。』
『────────────。』
『ギルバート夫妻も覚悟の上。この子を家族に迎え入れたいと申しております。』
『……───────。────────────。』
『はい。……ありがたき幸せ。』
会話が途切れると俺の身体が暖かい光に包まれていった。
その光の中で光の珠を見ていると、自分の光が収まるにつれ人の姿がぼんやりと見えてくる。
ふわふわの短い金髪にオレンジの暖かい眼差しをした男性が俺を見ていた。
光が収まるのを確認し、男性が口を開こうとする。
《【光の精霊の加護】を取得しました。》
だから!大音量やめぃ!
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
泣いちゃうでしょ!俺がっ!
何回やんのこれっ!!
『恐れながら、サンルーク様。加護を受けた為にサンルーク様の姿が見える様になり、その……この子は人間の姿を怖がる様でして……』
『えぇ~?そうなのぉ?なら、しょうがないなぁ~』
やる気の感じない声を出しながら男性は光り、次は光輝くヒョウの姿になっていた。
その勘違いも何回やんの!?
誰か誤解を解いて、お願い……
『ほらぁ。泣き止んでくれないと、話が進まないでしょぉ~?』
前足でぽんぽんとお腹を叩かれる。
一定のリズムでされる事、数分。
ようやく落ち着いてきた。
『落ち着いたねぇ?まだ言葉は分からないかもしれないけどぉ……。はじめましてぇ、僕は サンルーク=ヒルラント。光の大精霊をやってます~。』
どこか気の抜けた喋り方をしているが、その瞳は優しくそして強く輝いていた。
『君の事は
いや、聞かれても……。
そもそも、サンルークの母様って誰?
喋り方はやる気なさそうなのに、その探る様な瞳はやめてくれないか。
知らんもんは、知らん!
『う~ん……何も知らなさそうだねぇ。(……て言っても言葉を理解していないだけなのかなぁ。)』
おお!初めて意志疎通が出来たっ!!
なんか嬉しい。
後半の言葉は聞き取れなかったけど。
「キャハハハハッ」
『機嫌が良いのは嬉しいんだけどぉ。どこに機嫌が良くなる要素があったのか分からないなぁ~。』
困った様に頭をかきながら苦笑を漏らす。
なんか、すいません。
感情が勝手に声で現されるんです。
意志疎通出来た事が嬉しくて、つい。
『僕も詳しく言われてないからぁ、『面白い人間』ってどういう事なんだろうねぇ……まぁ~、とりあえず~……これからぁ、君は神狼族の一員としてぇ、頑張ってねぇ。神狼族が持っている固有スキルの【鑑定】を君にあげたからぁ。』
カインとライアが俺に使ってたやつか。
言葉通り色々と鑑定するんだろうけど、神狼族の固有スキル……何に使うんだろうな。
『まぁ、神狼族以外にも使える種族とかぁ人間がいるけどねぇ?そんなに数はいないからぁ………………気を付けてねぇ?』
何に!?気を付けるの!?
そんな怖い事、言わないでっ!
よし、神狼族以外の人には絶対言わない様にしよう。
『ねぇ……ライア=ギルバートが…………育てるんだよ、ねぇ……?』
『はい、左様でございます。』
俺に向けていたオレンジの瞳を長老に向け、再び俺に戻る。
その瞳は可哀想な者を見る感じがした。
そんな瞳で見ないでー。
『……君ぃ…………頑張ってねぇ?』
ちょっと待って!
何を頑張ったら良いの!?
そこを詳しく教えてっ!
『じゃぁ、後は~ハロルド=バージルに任せるよぉ。』
ハロルド=バージルって誰?
『
長老の名前か!
一回、全員自己紹介してくれねぇかなぁ。
名前……分かんないよ。
『それじゃぁねぇ。』
不安になる言葉だけを残し、サンルークは光に包まれ消えて行った。
『さて、あの二人の所へ戻るとするか。……特にライアが待っているからな。』
俺の頬に長老は鼻を押し当ててから、布を咥えて歩き出した。
精霊に心配される子育てって……不安しかないんだけど。
そして、白い部屋を後にして、来た道を戻って行った。
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