身代わりシール


 通販雑誌を顔に乗せ寝てる男は外から聞こえるセミの声に乗せてた雑誌を窓に投げつけると、雑誌は男が気になるページで床に落ちた。


『身代わりシール』


 「なに。これ」

 身代わりシール

 このシールを貼ると貼ったモノ・人に危害が加わるとその痛みや傷が自分にくるものらしい。

 効果は10分で、10枚入って3500円と安いのか高いのかわからないが、男は考えることなくすぐに注文の電話をした。

 小さい頃から何もしてこず、頭も悪かった男は誰の役にも立たない人生を送ってきた。誰かの役に立つならこの値段は安いと思い、迷わなかった。


 次の日、男のもとに届いた。

 男はすぐにダンボールを開けるとシールを持って街に飛びだした。

 フラフラ歩いているとシマウマのようなひ弱そうな学生がその後ろをライオンのようなチンピラ二人が歩いていた。

 「これはもしや」と思った男は小走りで学生に近づくとスッと袖にシールを貼った。

 学生からちょっと離れたところで電柱の陰から覗いてると男が目を離した隙に、建物の間でシマウマがライオンに襲われていた。

 学生がカバンから財布をだすが、どうやら足りなかったらしく一発右頬に鉄拳が飛んだ。


その瞬間、男の右頬に激痛が走った。


 当然、学生は全く動じてない。その様子にチンピラ二人は少し戸惑って、もう一発右頬に鉄拳が飛んだが、学生は口をすぼめて立っている。その裏で男は電柱のそばで血をだしながら右頬の激痛に耐える。

 何が起きてるのかわからないライオンはシマウマを数発殴る蹴るして、どこかへ行った。男もフラフラとその場を離れた。


 フラフラ歩く男の意識が朦朧としてきたのか赤信号で横断歩道を渡ってしまい、車にはねられ入院を余儀なくされた。

 四人部屋のベッドで寝ていると看護師さんが空気の入れ替えのためにと窓を開ける。すると、風に乗った数枚の身代わりシールが飛んでいった。


 いろんな場所や人に貼られた身代わりシールは一日で様々な危害を受け、そのダメージはすべて男へ向かった。

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