めいどかふぇ その6

「ああ、勘違いしないでくれ。別にウチはオカルトに偏見ないし、君がドッペルだって事を他言するつもりもないよ。そんな話をしたら、ウチが残念な子扱いされる」


「……それは、確かに。というか、信じるんですか?」

「中学時代に毬夢から腐るほどオカルト話を聞かされてきたからね。あー、ホントにいたのか、って程度の感覚かな」


 からからと笑うまどかちゃん。うん、常識人のはずなんですけど、毬夢ちゃんの影響なのか、ちょっとだけ変わってますね~。


「毬夢から電話で聞かされたんだけどね? あの子、君に会えたのが凄く嬉しかったみたいだよ。テンションが異常に高くて対応が大変だった」

「まぁ、生きたオカルトみたいなもんですし、俺」

「ふふ、ウチは君がオカルトな事だけが理由じゃないと思うけど、ね。オカルトにしか興味を持たなかったあの毬夢が、変わっちゃったもんだよ」


 別にいいけど、とまどかちゃんが店の方を見やります。


 うふふ、すっごく意味深な事を言ってますね~。けど……ドッペル君は何の事か全く分かってないみたいです。ふぅ、これだから男ってヤツは。


 ……え? どういう意味なのか、ですって? あなたもですか……はぁ。


 ではそんなあなたにこの言葉を贈ります。


『鈍感が許されるのは二次元まで』


 はい、よーく心に刻んでおくように。じゃ、罰としてもっと私にくっついて下さい。


……罰の意味が分からない? 口答えする暇があったらくっつくんです。ほら早く。


……うふふ、それでいいんですよ、それで。人の温もりって素晴らしいですね?


「聞けば今は毬夢の家で世話になってるんだって? もしも追い出されたら、是非ともウチに来てくれ。男だってことが全く気にならないくらい、君はここに馴染めている。住み込みで働けるよう、全力で手配させてもらおうじゃないか」

「そうならない事を祈ります……って、副店長とは言え、バイトでしょう? そんな事、出来るんですか?」


「うん、多分。このカフェ、出来てまだ一年と少しなんだけど、店長とウチの二人はオープニングスタッフなんだ。で、店長は経理とか食材の仕入れだとかの裏方に専念していて、代わりにウチが店の営業に関してのほとんどを任されてるのさ」

「……高校生ですよね? 萩宮さん」


 ドッペル君の問いに、萩宮さんは肩をそびやかして苦笑します。


「そのはずだけどね。高校がバイトOKだったんで入学と同時に働き出したんだけど、一年働き続けたら仕事の事はイヤでも分かったし、店長が来ないからウチがほぼ毎日出勤しなきゃいけないし。良くも悪くも高校生バイトとして扱われてないんだよ。まぁ、ウチにとっての部活みたいなものかな?」


 物は言い様ですね~。見たところ、ネコメイドさんの仕事に誇りを持っている感じがしますし、もうここに就職しちゃえばいいんじゃないでしょうか……って、こっち!


「ま、まどかさん!」


 ネコメイドさん1人、血相変えてスタッフルームに飛び込んでいきます。


 あ、危なかったです。あと少し気付くのが遅れたら、確実に見つかってました……! これぞスリルです、スリルが溢れてますよ、はい!

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