かいそ~

「実はさ、私の中学の時の友達で、他の高校に通ってる子が隣町でバイトしてるんだけど、その人手が足りないからって私を誘ってきてたんだよ」


「へぇ。毬夢、お前はそれに乗らなかったのか?」


「私は日々オカルトの研究にいそしんでるからバイトする暇がないの。で、それを樹々君に紹介する。休日の手が足りないって言ってたし、今週の土日がどうか訊いてみるよ」


「そりゃありがたいけど、履歴書の件が解決できてねぇ気がするんだが?」


「だいじょぶだいじょぶ。その子、バイトなのに副店長ぐらいの権限を持ってるから、新しいバイトの採用もその子が決めてるんだってさ。今回は臨時のお手伝いとして雇われるだけのはずだから履歴書もいらないし、最悪私の紹介って事でごり押ししてあげるよ」


「ごり押ししていいのかよ……てか、大丈夫かよそれ? バイトが副店長とか、その店って色んな意味で問題あるんじゃね?」


「そんな事ないって。私も一度行った事があるだけだけど、すっごく繁盛してて雰囲気の良いお店だから! 頼んだよ、樹々君?」





「……さて、隣町に来たはいいが、ここら辺だよな? すげぇ目立つピンクの看板って話だが、そう簡単に見つか……ったわ。アレだな? マジで目立ってやがる。

 ふぅ、たかが隣町とは言え、チャリだと足にくるな……えっと、すいません、毬元毬夢の紹介でこちらで働かせて頂く者ですが!」


「あぁ、いらっしゃい。『にゃにゃにゃカフェ』にようこそ! ウチがここでバイト兼副店長をやってる萩宮はぎみやまどかだ。よろしく」


「あ、はい、よろしくお願いします萩宮さん。……えっと、さっそくお訊きしたいんですけど、ここって喫茶店ですよね?」


「そりゃあ、カフェ、だからね」


「ですよね。名前だけ聞いてたので、今流行りの猫カフェみたいな店だと思っていたんですけど……猫、一匹も見当たりませんね」


「そんな事ないさ。ほらそこにも、あそこにもいるぞ? 君の目の前にも、ね」


「え? 萩宮さんに、他の店員さんが、猫…………あれ? あの、すみません。今、猛烈にイヤな予感がし始めたんですけど……?」


「気のせい、さ。さぁってみんにゃ~、新しくウチで頑張ってくれる猫ちゃんを可愛く変身させたげて♪」


『にゃん♪』


「ちょっ、待っ、うわぁぁぁぁぁぁあああああ!?!」


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