最終章 戦場の死神

プロローグ 戦場の風

 中国 北京市

 北京は中華連邦政府と、中国共産党との戦いの激戦区である。民間人が居るのにも関わらずいきなり始まる銃撃戦や空爆には、何の罪も無い一般市民が多数巻き込まれ、犠牲になっていた。道の端を見れば、行き場を無くした人達や子供達、もう息をしていない死体が横たわっていた。

 街を歩いているだけで銃声や悲鳴、爆音が何度も聞こえる。兵士の軍靴の音、戦車や装甲車両のエンジンの音、ヘリコプターや戦闘機が空を駆ける音などが曇り空の北京に響く。

 そんな北京の地下鉄を中華連邦政府や反乱者などは占拠し、基地としていた。

「うぅ、、寒い、、、。」

 バラライカは地下鉄の寒さに凍えていた。手を擦り合わせて摩擦を起こし、手を温めていた。

「ほら、飲んで。温まるよ。」

 シャドウがインスタントのコーンポタージュをお湯を沸かして作り、バラライカに手渡す。

「ありがとう。気が利くじゃない、、、。」

 温かいコーンポタージュの入った容器は、とても温かかった。かじかんだ手を直ぐに温める。

 そして、バラライカはコーンポタージュを口に入れる。温かいコーンポタージュは、喉を通り胃に入る。そして、体全体を温める。

 そして、バラライカはそれを半分位飲むと、口から容器を放した。

「アンタも飲みなさいよ、、、。温まるわよ、、、。」

 バラライカは飲みかけのコーンポタージュをシャドウに差し出した。

「いや、全部飲んで良いよ。俺は後でもう1個作るから。」

 シャドウはバラライカに容器を返そうとするが、バラライカはそれを受け取らなかった。

「早く飲む!それとも、私が飲んだヤツが嫌なの、、、?」

 バラライカは顔を赤らめてそう言った。

「い、いや!そんな事無い!」

「じゃあ、飲みなさいよ。」

 シャドウは唾をゴクリと飲んで、その温かい容器を受け取る。

「―――いただきます。」

 そして、口の中にコーンポタージュを流し込む。

 シャドウの飲んだコーンポタージュは瞬く間に彼の体を温めた。しかし、別の何かも彼の体を温めていた様だった。 

「―――もう1個飲みたい。」

 バラライカはシャドウの服を引っ張って言う。

「分かった。もう1度作ってくるから待っててね。」

 そう言ってバラライカから離れようとした次の瞬間――――、


 耳を割くような大きな爆音、地下鉄のシャッターを激しく叩く爆風、そして、地下鉄を大きく揺らすような大きな揺れが彼らを襲った―――。



 リーパーは、ユニオンベースでインターフェースを外して横に置き、展望スペースで夜景を眺めていた。久しぶりのゆったりとした空間と時間である。

 リーパーはありとあらゆる任務をぶっ通しでしていた為、休暇を取っていた。しかし、リーパーは休暇中も銃は手放さなかった。相棒のG18Cはいつも彼のホルスターの中に2丁あった。

 そんなリーパーのインターフェースに緊急回線が入る。慌ててリーパーはインターフェースを装着する。


『北京、上海、香港の3都市からのストライク・ブラック、又は中華連邦政府からの信号消失。UAV(無人偵察機)が核爆発を観測。』


 彼の目の前には予想もしなかった事が表示されていた。

「―――そんなバカな、、、。」

 彼はふと、思い出す。

「北京、、、?シャドウとバラライカは無事か!?」

 リーパーは激しく頭をかく。

「畜生、、、共産主義者共め、、、。」

 彼は拳を強く握り、テーブルを強く叩いた。

 すると、展望スペースの扉がいきなり開く。

「リーパー、休暇中に失礼します。至急、ミィーティングルームにお集まりください。」

 ストライク・ブラックの士官が、リーパーを呼びに来た。彼も相当焦っている様だった。

「コイツぁ、、、大変な事になったぞ、、、。」


「おい、ニュース観たか、、、?」

「あぁ、中国で核攻撃だとな、、、。現地の連中は無事か?」

「それが分からん、、、。何も無いと良いな、、、。」

 基地の中ではその様な会話が多く聞こえた。ニュースでも、その事を大々的に報道している様だ。

 シャドウは士官に連れられてミーティングルームに入った。入り口にはM4A1を抱えた重装備の基地警備兵が警備をしていた。

 部屋の中にはストライク・ブラックの要人や高官、そして、たまたま来ていたプライスが居た。

「プライス、どうなっているんだ!?」

「それが俺にも分からない。核爆発のEMP(電磁パルス)で通信機器が全部ぶっ壊れてるんだろ。通信障害もヒデェ、、、。」

 プライスも慌てている様だった。

「総員起立。マスターからの通信。」

 部屋に置いてあった大画面のモニターに、ストライク・ブラックのマークが表示される。

 部屋に居たリーパー達は一斉に立ち上がる。

『諸君、座りたまえ。』

 マスターの声がスピーカーからした。全員が一斉に座る。

『何があったか報告してくれないか?』

「ハッ!」

 ストライク・ブラックの幹部の1人が立ち上がる。

「北京、香港、上海の3都市でメガトン級の核爆発が観測されました。おそらく、中国共産党の攻撃と思われます。現地ストライク・ブラックからの信号が全て消失しました。また、核爆発のEMPの影響により、多大な通信障害が起こっています。よって、現地の状況が全く掴めていない現状です。」

『そうか。分かった。現地調査と増援は、数日後にオホーツクベースに要請する。ユニオンベースは今まで通り待機だ。以上、ストライク・ブラック万歳。』

 そう言って、マスターからの通信が切断された。そして、会が解散となり、各自が動き始めた。

「おい、そう言えばシャドウとバラライカは北京に居るんじゃないのか、、、。」

 プライスがリーパーに尋ねてきた。

「あぁ、シャドウとバラライカは北京に行った。アイツらの信号も消失しやがった、、。」

「無事だと良いがな。」

「あぁ、全くその通りだ。」

 リーパーとプライスは、ただ、数日後に派遣されたオホーツクベースの報告を待つしか無かった――――。

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