エピローグ リーパーの過去

 バラライカとシャドウは2人でオスプレイに乗っていた。

「ねぇ、リーパーの過去って知ってる?」

 バラライカはシャドウにリーパーの過去について問う。

「あぁ、知ってる。」

「ねぇ、どんな過去なの?私には何をしても教えてくれなかったよ。」

「それはそうだろう。あいつは過去を捨てたんだから。」

「ねぇ、教えて。」

 バラライカはしつこく問う。

「良いけど、俺でもブルーな気分になる過去だぞ。あぁ、思い出しただけでも酷いモンだ。」

「それでも知りたい。私を助けてくれた恩人の話を。」

「そうか。それじゃ、教えてやる。でも、あいつにこの話題はNGだぞ?良いな?」



―――あれは、もう何年も前の話だ。

「死ね!!クソ野郎!!」

 あいつは日本に生まれた。残念な両親の元に生まれちまったから、親の思い通りにならないと罵声を浴びせられて暴力を振るわれてた。そんなのが毎日だ。

 あいつは親に何も認めてもらえなかった。あいつがしたことを全て認めなかった。

 そんなのが生まれてから中学校まで続いたんだと。まぁ、14年位って言ってたような気がする。

 あいつは酷く親を、国を、世界を憎んだ。そして、いつも復讐心を持って生活をしていた。

 でも、あいつには心の支えがあった。それがナチズムだ。あいつはナチズムを信じていた。だからあいつはナチスが今でも大好きだ。んで、その影響なのか共産主義は大嫌いだ。

 そして、あいつは昔からゴミ扱いされていたからか、自分をゴミの様にしか感じていないらしい。結婚をせず、子供は残さないつもりだ。あいつの恋愛という価値観は人間が足りない物を補い合う為にするものだと思っている。自分は劣性遺伝だから人を愛してはいけない。そう言っていた。

 昔からけなされていたか、恋愛感情そのものがそもそも無い。だから、人を愛せないし、愛し方を知らないんだと思う。あいつにも良い所はあるんだがな。それを知らないらしい。自分は最低なのさ。あいつにとって。


 そんな生活を続けていたリョ、、いや、リーパーは遂に行動を起こす。

「お前は使えないんだよ!!死んどけ!!」

「あぁ、、?俺が使えない、、、?いつからお前達みたいなゴミの道具になった?」

 リーパーは親に反抗をした。すると、親は激怒したようだ。

「お前何言ってんだよ!!ぶっ殺すぞ!!」

「殺されるのはどっちかな?」

 それで、親はあいつに殴りかかってきたらしい。でも、あいつは逃げなかった。そして、最初に親父を殺した。

「俺は、お前達の道具なんかじゃ無い!!俺に対しての罪は死をもって償ってもらう!!」

 あいつは親父の心臓に包丁を刺した。それが、リーパーにとっての初めての殺人行為だ。

「うぅ、、、。ゴメンなさい、、。ゴメンなさい、、、。」

 それを見た母親は腰を抜かして動けなくなっていたそうだ。

「謝っても謝ってもお前達は俺への暴力は止めなかった。だから、俺は止めない。死ね。」

 そんな母親も殺した。殺してもなお、両親の死体を刺し続けたそうだ。その時はとても楽しかったそうだ。

「兄貴、、、。」 

 それを3人の弟は見ていたそうだ。弟達も親に暴力を振るわれてたそうだ。

「ごめんな。俺はこんな事しか出来なかった。そして、もうさようならだ。お前達にはもう一生会えない。出て行く支度をする。すまないが警察へは俺が出て行ってからにしてくれないか?最後の頼みだ。」

 そう言って旅の支度をしたそうだ。長い、長い旅の支度を。


「じゃあな。兄貴。」

「あぁ、達者でな。お前達。」

 リーパーは弟達を置いて、人生を捨てて旅をした。寒くて暗い夜に家を出たそうだ。



 あいつは死ぬ気でいた。だから家にある金を全て持って適当にバス、電車、新幹線を使って自分でも分からない所へ行ったそうだ。そして、自分の好きな事をした。せめて、死ぬ前に自由を満喫したかったんだろう。

 そして、あいつは港から少し離れた海に切り立つ名も知らない崖で夕焼けの景色を見たそうだ。それを見たリーパーは、もう満足したそうだ。自分の人生に。

 そして、荷を全て下ろしてから海に飛び込もうとしたらしい。でも、あいつはあの人に出会った。

「ストップ!ストップ!ストップ!!ちょっと待って!!」

「何ですか!いきなり!」

「それは僕のセリフなんだけどなぁ、、、。」

 あいつの自殺を逝く寸前で食い止めた『僕』が一人称のメガネ女がいたそうだ。まぁ、そいつは俺の知り合いでもあったんだけど、そんな話は置いておいて、とにかく、あいつの自殺を止めたんだ。彼女が。

「まぁ、座んなよ。僕は君の話を聞きたいな。君が死ぬ前に。」

「もう良いですよ!!俺はもう疲れたんだ!!早く死にたいんだ!!」

「そんな事言わずにさ。ほら、コーラ飲む?美味しいよ。」

「じゃあ、少しだけ。」

「フフフ、ありがと。」

 

 あいつはは彼女に全てを話した。自分の人生の全てを。

「君、よく頑張ったね。」

「誰も俺なんか、、、。誰も認めてくれませんよ。」

「いや、僕は認めるよ。君の事。」

「もう疲れたんだ。俺は、、、。」

「そうだ!君、銃は好きかい?ミリタリーは?アニメは?ゲームは?」

「まぁ、、。好きですけど、、、。」

「ビンゴ―!!だと思ったんだよねー。だって君、カバンにG18Cのキーホルダーぶら下げてるからさー。あと、ガンダムのストラップ。」

 彼女はあいつのキーホルダーを見て追いかけたらしい。あいつと話がしたかったんだろうよ。純粋に。でも、とんでもない訳アリだったって感じか?知らんけど。

「じゃーん!見て!僕の銃だよ。」

「M1911A1。アメリカのコルト・ファイヤーアームズ社のオートマチックハンドガン。45ACP弾を使用する銃。」

「せーかーい!!良く知ってるね。僕、かんどーだよ!!」

「それで、ガバメントがどうしたんですか。」

「これ、実銃だから!!」

「また俺をからかおうとして、、、。まただ、、、。」

「いや、僕は本当の事を言ったんだよ。見てて!!ちょっとうるさいけど。」

 彼女は銃を彼の足元に撃ったらしい。とんでもアマだな。でも、ガンマニアのリーパー君はそれでも感動したらしい。

「ほ、本物だ、、、。」

「そ、僕は君をからかったりしないし大切にするよ。」

「それは、、、。どういう、、、?」

「この世界は要するに、、、。パズルなんだよ。必ず誰かがどこかにはまるようになってる。でも、君は家族というスペースにははまらなかったみたいだね。世界は広いんだよ。でも、僕と君はここで偶然出会った。奇跡だよね。僕が君を止めなかったら確実に向こうに逝ってただろう?」

「まぁ、、そうですね。」

「そして、僕は今。君のはまる場所を教えに来たんだよ。」

「俺の、、、はまる場所?」

「そう。君を必要としている場所。そこは君を認めてくれる。君の人生を認めてくれる。そして、世界を平和にする所だよ。」

「世界を平和に、、?」

「そう。君が世界を救うんだ。その手で。」

 こうして、一人ぼっちの少年はメガネ女に出会って死神になったんだ。

 そして、あいつはもう自分の様な人間を生み出さない為に戦っている。自分の命を死に晒して。だから、他人に優しく出来るんじゃないか?あいつは苦しさを知ってるから―――。



「これがあいつの過去だ。って、おい!!聞いてねぇし、、、それは、、、。ちょっと、、、、。」

 シャドウはバラライカにリーパーの過去を知る限り全てを話した。シャドウの腕にバラライカがしがみ付いている。

―――か、可愛いっ、、、。

 シャドウはマスクの下の顔を赤く染めて黙る。シャドウの心拍数が上がる。

「起きてる?」

 シャドウはバラライカをツンツンしてみた。どうやら寝てしまったらしい。

―――僕は君をあいつの様な人生にはさせないし、守り続けるよ。どんなに辛くても、痛くても。

 シャドウはバラライカを抱いて目を閉じた。

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