第13話 赤い炎、闇を染める。

ウクライナ東部 ウクライナ軍基地 午後11時

 そこは作戦司令本部。前には大きなモニターが設置してあって、様々な情報が表示されている。それは、何も表示されていない航空レーダーにいきなり表示される。

「て、敵ヘリ接近中!!数は、、、8です!こちらに向かってきます!!」

「各員、第一戦闘配備!!全部隊展開させろ!!対空砲、戦闘ヘリ、戦闘機も要請!!」

「「「了解!!」」」

 夜中の基地に大きなサイレンが鳴り響く。それを聞いたウクライナ兵士は慌ただしく戦闘準備をする。


「何だ?」

 リーパーはヘリの中で爆睡中だったが、コリブリに叩き起こされる。

「敵襲です!」

「ん?もうちょっと寝せろ。」

「それどころじゃ無いですって!!」

 再び寝ようとするリーパーをコリブリは叩き起こす。

「状況は?」

 リーパーはコリブリに叩き起こされてインターフェースを装着する。

「ここの情報によると敵ヘリが接近中だそうです。」

「分かった。じゃあ、早速試してみるか、、、。」

 そう言ってリーパーはインターフェースで航空戦力を要請する。

『こちらヴァイスシュヴァルツ01。識別コードを要求。』

「コード『リーパー』。リーパーは、現地点に航空戦力を要請。繰り返す、現地点に航空戦力を要請。」

『ヴァイスシュヴァルツ01、了解。我々がそちらに向かうまで死ぬなよ。オーバー。』

「言ってくれるな。アウト。」

 リーパーは通信を切る。

「お前はこの基地に残って発進準備をしておけ。いつでも撤退出来るようにな。」

「了解!」

 そうコリブリに言い残してリーパーはヴェノムから降りた。


 リーパーはヴェノムから降りた後、走って作戦司令本部に向かった。

「展開準備急げ!!」

「了解!!」

 どの兵士達も忙しそうだった。そしてリーパーは作戦司令本部の扉を勢いよく開ける。

「司令官!司令官は居るか!?」

「私だ。何の様だね?」

 基地司令官は自分の指揮していた椅子から立ち上がってリーパーの目の前に歩いてくる。しかし、リーパーは自ら司令官の前へ行く。

「恐らく、、、いや、絶対に市街地が戦場になる。早く住民を避難させないと犠牲者が増えるぞ!!兵士を派遣して避難させるべきだ!!」

 この基地は市街地の近くに設置されているため、市街地にいる民間人にも被害は無いとは言えなかった。

「ダメだ。まだ兵員の準備が間に合っていない。しかも、避難場所が、、、」

「うるせぇ!民間人が第一だ!!」

 その瞬間。大きな爆発音がして基地が大きく揺れる。

「何だ?」

「す、ステルス機能を搭載した爆撃機です!!」

「「何だと!?」」

 基地司令官とリーパーは声を上げて驚く。

「周囲の電波を妨害するジャミングシステム搭載機かと思われます!!」

「司令官!!街が空爆を受けている!!早急に民間人を非難させろ!!」

「分かった。早急に避難させよう。」

 基地司令官は部下に指示出す。

「俺はヘリ遊撃に向かう。その他の部隊は市街地及び基地の防衛だ。ここが陥落したら親ロシア派の攻勢が始まるぞ。」



「見えてきたぞ!クソ共の基地だ!」

 ヘリコプター『ヘイロー』の中から市街地の明かりとウクライナ軍の基地の明かりが見えてきた。先行したMig-23の爆撃によって市街地からは真っ赤な炎と煙が夜にも関わらず見える。

「各員!!基地上空になったら展開しろ!!」

 男は無線機で周りにも飛んでいる味方にそう指示をする。その次の瞬間――――、

『クソッ!!パイロットの頭がぶち抜かれた!!つ、墜落するっ!!』

 その男の右隣で飛んでいたヘリの高度がドンドン降下する。そして、低空飛行をしていた為、すぐに地面に接触。赤い炎と黒煙を上げて爆発する。

『これじゃあ基地の上空に行く前に全滅しますっ!!』

「その様だな。」

『隊長!!ご決断をっ!!――――ウァァァアアア!!』

「ヘンドリクスッ!!」

 今度は男の左隣を飛行していたヘリがロケットランチャーを喰らって空中で爆散した。

「クソッ!!全員降下だ!!急げっ!!」

 男はヘリを待機させ、ロープを直ぐに垂らしてラぺリング降下を開始した。同時に周りのヘリも停止し、ラぺリング降下が開始される。

 そんな中、周りのヘリがロケットランチャーの攻撃を受けて爆散し、撃墜していく。

―――――どうしてミサイル接近アラートが鳴らなかった、、、?まさかっ!!

「ウァァァッ!!」

 男がさっきまで乗っていたヘリコプターが自分の上空で爆散し、破片が散らばって来る。男はとっさにその場を離れ、破片から避難する。

「クソッ!!敵は無誘導でヘリを撃墜するだとっ!?バカな!!そんなバカなぁぁああ!!」

「隊長!」

 その男の周りに多くは無いが兵士達が集まって来る。

「生存者は?」

「これだけです、、、。」

 見た所、ざっと20名程しか生き残りが居なかった。

「もう俺達は撤退出来ない。進むしか無いぞ!!」

「―――死神だ、、、、。やっぱり死神は居たんだ、、、。」

 生き残った兵士は自分のAKを抱きかかえて怯え始めた。

「良いか?死神なんざ俺達がぶっ殺す。死んだ仲間の分も制裁を加えて殺せば俺達が死神になれるんだ。」

 そう言って男達は市街地を目指した。真っ赤に燃え上がる市街地を―――――。



「クソッ!!歩兵が展開しやがった!!街が戦場になる!!」

 ロケットランチャーを担いでいたリーパーはロケットランチャーを地面に投げ捨てる。

「リーパー!!」

 後ろを振り向く。そこにはソコロフの部隊が居た。

「ソコロフ!!街が戦場になる!!他の部隊をかき集めて来い!!街に行くぞ!!」

「そいつは大変だ!!皆分かったな!!俺達は街に向かうぞ!!」

「「了解!!」」

「誰か車を取って来い!!」

「分かった!」

 ケレンスキーは兵員輸送車両を取りに行った。

「リーパー!!私も連れて行って!!」

 リーパーの目の前にバラライカがAK74を持って現れた。しかし、リーパーは無視をする。

「リーパー!!」

「お前を連れて行く事は出来ない。」

「えっ、―――」

 バラライカは見放されたような悲しい顔をする。

「ここを守っておけ。お前はあそこの部隊に合流しろ。」

「ま、任せなさいっ!」

「―――その調子だ。」

 バラライカはリーパーが指さした部隊の所へ走って行った。

「チェブラーシカ!負傷者の手当ては出来るか?」

 リーパーはM4A1と医療バックを持ったチェブラーシカを呼ぶ。

「えぇ、治療は出来るわ。」

「お前もここに残るんだ。衛生兵を最前線に行かせる訳にはいかない。」

「でも、私も戦えるわ!」

「負傷したヤツはここに担ぎ込まれる。治療は人手が多い方がはかどるだろ?」

「分かった。医務室に行くわ。」

「そうしてくれるとありがたい。」

 チェブラーシカも医務室に行ってしまった。

「さぁ皆さん。市街地行の観光バスはご利用ですか?」

 大きなトラックの様な兵員輸送車を運転したケレンスキーがやって来た。

「俺とリーパーは前、その他は全員後ろに乗れ!!」

 ソコロフが部隊に指示を出すと、一斉に隊員達が後ろに乗り込んだ。

「リーパー!!乗れ!!」

「悪いな。でも金は持ち合わせていないぞ。」

 リーパーは前の席に乗り込んだ。

「我々も市街地に向かう。」

 他の兵士を乗せた兵員輸送車が市街地に向けて先行する。

「俺達も向かうぞ!!車を出せ!!」

「了解!!」

 リーパーを乗せた兵員輸送車は市街地に向けて出発した。

――――市街地、、市街地、、、、。

「サーシャ!!」

 リーパーは思い出した。市街地にはサーシャの居る花屋がある事を。

「市街地に着いたら俺は別行動をする。前の潜入作戦でも上手くいったから大丈夫だろ?」

 リーパーはソコロフにそう言う。ソコロフは少しだけ考えた。そして、

「まぁ、今回も信用してやるか。」

 ソコロフはリーパーの単独行動を承認した。

「でも、死ぬなよ。」

「お前もな。」

 ソコロフはリーパーに『死ぬな』。そう伝えた。

――――サーシャ。待ってろよ、、、。

 夜空は空爆の真っ赤な炎が染めていくのだった。

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