ストライク・ブラック

@REYNE

第一章 少女の唄

第1話 正義の名の下に

 壊れかけたこの世界、、、。だから、灰色の空を見ながら俺達は戦う。守るモノ?そんな物は無い。もうそんな物はとっくの昔に無くなってしまった。こんな世界に明日は無い?

 フッ、あると信じて戦うのさ、、、。


 ヨーロッパ.ウクライナ東部

 ウクライナ東部は、ウクライナの親ロシア派と親EU派の戦いが繰り広げられている紛争地帯だ。そんな紛争地帯に、死神《リーパー》が舞い降りたのだった、、、。


「こちら『ウラジーミル3』。異常は見られない。オーバー。」

 ある満月の夜。緑の迷彩服を着た部隊が殺伐とした涼しい東ウクライナの大地を監視していた。すると、上の方でバタバタと音がする。

「?」

 すると、その兵士達にサーチライトが浴びせられた。

「ウァッ!」

 そして、サプレッサーを通して発射された無音にほぼ近い5.56mmのNATO弾が、その兵士達の体に『穴』を開ける。その『穴』からは、『緋色の生暖かくも鉄臭い液体』が滝のように溢れ出てくる。

「クリア!ラぺリング降下始めっ!」

 音の正体は輸送ヘリのUH-60ブラックホークだった。そして、そこからロープが垂らされ、そのロープを伝い、ズシリと重く、先端に筒状のサプレッサーの付いたM4A1を持った黒い兵士が一人、もう一人と次々に降下してきた。M4A1は、アメリカのコルト社の5.56mm×31NATO弾を使用するカービンライフルだ。

「ゴーゴーゴー!!」

 その部隊は目の前に見える親ロシア派の軍事基地に向かって慎重に向かう。

「止まれ!止まれ!」

 部隊は物陰で足を止める。目の前には大勢の兵士が駐留していた。完全に不利な状況である。

「我々では倒せそうも無いですね、、、。」

「隊長、ここは撤退を、、、。」

 部隊の兵士達は完全に弱気になってしまった。そんな時、

『ガタン!』

 基地の照明が落ちた。基地が暗闇に包まれる。

「敵襲!!撃て撃て!!」

 親ロシア派兵士達のAK74u《クリンコフ》が、火を吹く。

「隊長、何かあったのでしょうか?」

 部隊からは様子が見えない。しかし、敵兵士の悲鳴や叫び声と銃声は聞こえる。

 しかし、その銃声は、一つ、もう一つと消えていくのは分かった。そして、照明が復旧した。しかし、照明が復旧する頃には銃声は無くなっていた。

「俺が見てくる。お前達は待機。」

「隊長!危険過ぎます!」

「黙れ!俺が死んだら副隊長のお前が指揮を執れ。」

 そう言い残した兵士は一人、物陰を飛び出していった。


 部隊を置いてきた兵士は、親ロシア派の基地を見て呆然と立ち尽くした。なんと、その基地は親ロシア派兵士の死体が散乱し、その死体からドロドロと出てくる血で赤い海が出来上がっていたのだ。その血の海は、照明に照らされて光沢を放っていた。

 そして、その血の海に一人、VRのような物をし、黒いマスクを着けた兵士が一人立っていた。その姿は死神リーパーそのものだった。兵士は、両手に大きな拡張マガジンとサプレッサーの付いたG18Cを装備していた。

G18Cは、オーストリア、グロック社のフルオート射撃の可能な9×19mmパラベラム弾を使用するハンドガンである。

 そして、その兵士は呆然と立ち尽くす兵士に気づく。

「お、、、お前は一体、、、!?」

「お前はウクライナ軍だな?」

 ロシア語を口から放ちながら胸のウクライナ国旗を指す。

「そ、、、そうだ、、、、。」

「そうか。そいつは良かった。俺はお前達の味方だ。」

「しかし、お前はウクライナ軍じゃなさそうだが?」

「そうだ。おれはストライク・ブラックだ。同盟であるEUの要請で派遣された兵士だ。コードネームは『リーパー』。よろしく頼む。」

「俺はソコロフ。こちらこそよろしく。」

 その兵士二人はその『地獄』で握手を交わした。


「もうしばらくで我々の部隊が到着する。そうすれば、親ロシア派をウクライナから追い出す事ができるだろう。」 

 リーパーはウクライナ軍の基地の作戦室で基地司令官とソコロフ、その他多数の兵士達にストライク・ブラックの事について説明をした。

「説明は以上だ。質問は?」

「じゃあ、質問だ。」

 椅子に座っているソコロフが口を開く。

「何だ?」

「ウォッカは飲めるよな?」

「は?」

「ボルシチは食えるか?」

「は?」

「ワレニキは?」

「は?」

「どうやらお前はウクライナの事を知らないようだな。俺達の

部隊で『訓練』させてやる。お前達、連れていけ。」

 すると、近くにいた兵士がリーパーの両腕を強引に引っ張り、どこかへ連れて行った。

「は?」


 リーパーは、ある個室に連れて行かれた。そこには、

「ウーーーラーーーーー!!」

 たくさんの兵士達がいた。どうやらリーパーを歓迎している様子だ。

「紹介しよう。俺の部隊、『ダポ・ヴァーチニア』だ。とことん訓練してやる。」

「は?」

 リーパーはまだ状況判断が出来ていない様子だ。すると、金髪で色白の巨乳、、いや、爆乳の美女がリーパーに抱きつき、その、、、ソ連の水爆の『ツァーリボンバ』よりも威力のある胸の爆弾×2を押し付けてきた。

「ズドラートラストヴィーチェ!!私はチェブラーシカよっ♪」

「そうか、、、。よろしく頼む、、、。」

 すると、メガネの男が近づいてきた。

「俺はケレンスキーだ。よろしく。」

「よろしく。」

「この女の武勇伝を聞かせてやろう。」

「そ、そうか、、、。」

 リーパーは苦しそうに例の『ツァーリボンバ』×2に顔の半分を埋められている。

「この女は狙撃された時に、そのクソデケェ胸で7.62mm×51R弾を受け止めたんだぜ。」

「そうなのか、、、。もっと話を聞きたいところだが、早く助けてもらわないと俺が向こうに逝く、、、。」

「いいじゃないか。爆乳に溺れて死ねるんだから。」

 あははは。と、周囲の兵士達が笑い散らす。

「ちょっと~、この変なの外してぇ~」

 チェブラーシカがリーパーのVRのような装備を外し、黒いマスクを外した。すると、部屋の空気はシベリアの大地のように冷たくなった。

「こ、、、子供じゃねぇか、、、。」

 なんとリーパーの素顔はカミソリで切ったような鋭い目。そして、整った顔立ちの青年だった。

「と、、歳は、、?」

「16だ。」

「出身は?」

「日本だ。」

 リーパーの出身地は日本だったのだ。

 すると、

「物凄くカッコいいボーイが出てきたじゃない!」

「うぅ、、、。」

 チェブラーシカはリーパーの素顔を見て大はしゃぎ。リーパーへの締め付けがより一層強くなった。

「クソ野郎共、飯が出来たぞ!」

 厨房から、色とりどりで美味しそうなウクライナ料理が次々運ばれてきた。

「チェ、、チェブラーシカ、、、。飯の時は離してくれるとありがたいし、もうちょっとでお前の胸で死ぬから早く離してくれないか、、、?」

「あ、、ごめんなさい。つい、、、。」

 リーパーはチェブラーシカの『ツァーリボンバ』から解放された。そして、飯の前に新鮮な空気を味わう。

「どうだった?チェブラーシカのブツは?」

 ケレンスキーがボルシチを食いながらリーパーに問う。

「レーニンとスターリンが生きてたら勲章をその胸にゴミのようにもらってただろう。しかし俺は、、、」

 机に置いてあったコップいっぱいの飲み物を飲み干す。

「ウハァッ!!これウォッカか、、、?」

「よく飲み干せたな、、、。」

 ケレンスキーは驚く。驚きのあまり、ボルシチを口から少しこぼす。

「俺は、貧乳の方が好きだ。」

「「「、、、、、、、、。」」」

 ケレンスキーは驚きのあまり口のボルシチを全部こぼして、ソコロフにM4A1のストックで頭を叩かれた。  

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